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長塚節歌集
ながつかたかしかしゅう
副題2 中
2 ちゅう
著者
文字遣い旧字旧仮名
底本 「長塚節名作選 三」 春陽堂書店
1987(昭和62)年8月20日
入力者町野修三
校正者浜野智
公開 / 更新1999-05-19 / 2015-07-03
長さの目安約 70 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 明治三十七年

    青壺集(二)

      郷にかへる歌并短歌

草枕旅のけにして、こがらしのはやも吹ければ、おもゝちを返り見はすと、たましきの京を出でゝ、天さかる夷の長路を、ひた行けど夕かたまけて、うす衾寒くながるゝ、鬼怒川に我行き立てば、なみ立てる桑のしげふは、岸のへになべても散りぬ、鮭捕りの舟のともしは、みなかみに乏しく照りぬ、たち喚ばひあまたもしつゝ、しばらくにわたりは超えて、麥おほす野の邊をくれば、皀莢のさやかにてれる、よひ月の明りのまにま、家つくとうれしきかもよ、森の見ゆらく、

     短歌

太刀の尻さやに押してるよひ月の明りにくれば寒しこの夜は

     人々のもとにおくりける歌
    一
いにしへのますら武夫も妹にこひ泣きこそ泣きけれその名は捨てず

世の中は足りて飽き足らず丈夫の名を立つべくは貧しきに如かず
    二
沖の浪あらし吹くとも蜑小舟おもふ浦には寄るといはずやも

葦邊行く船はなづまず沖浪のあらみたかみと[#挿絵]とりこやす
    三
明治三十五年の秋あらし凄まじくふきすさびて大木あまた倒れたるのちさま/″\の樹木に返りざきせしころ筑波嶺のおもてに人をたづねてあつきもてなしをうけてほどへてよみてやりける歌

いづへにか蕗はおひける棕櫚の葉に枇杷の花散るあたりなるらし

苦きもの否にはあれど羹にゝがくうまけき蕗の薹よろし

くゝたちの蕗の小苞ひた掩ひきのおもしろき蕗の小苞

秋まけて花さく梨の二たびも我行けりせば韮は伐りこそ

明治三十五年秋十月十六日、常毛二州の境に峙つ國見山に登りてよめる歌二首

茨城は狹野にはあれど國見嶺に登りて見れば稻田廣國

國尻のこの行き逢ひの眞秀處にぞ國見が嶺ろは聳え立ちける

    松がさ集
なにをすることもなくてありけるほど鎌もて門の四つ目垣のもとに草とりけることありけり。近きわたりの子供二人垣のもとにいよりて物もいはずしてありけり。我れ、この鎌もて汝等が頭斬りてむと思ふはいかにといへば、大きなるが八つばかりになりけるが、訝かしげなる面貌にて否といふ。我れ汝らが頭きらむといふはよきかうべにして素の形につけえさせむと思ふにこそといへば、いよ/\訝しみ駭けるさまにて命死なむことの恐ろしといひて垣のもととほぞきて唯否とのみいひけり。小さなりけるは四つばかりになりけるが、そは飯粒もてつくるにやとこれもいたくおどろけるさまにてひそやかにいひいでけり。腹うち抱へられて可笑しさ限りなかりき。罪ある戯れなりかし。メンチといふものを玩ぶとて常に飯粒もてつけ合せけるよし母なるものゝきゝて笑ひつゝかたりけり。

利鎌もて斷つといへどももとほるや蚯蚓の如き洟垂るゝ子等

みゝず/\頭もなきとをもなきと蕗の葉蔭を二わかれ行く

秀眞子ひとり居の煩しきをかこつこと三とせばかりになりけるが、このごろうら…

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