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![]() どんたく |
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作品ID | 1048 |
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副題 | 絵入り小唄集 えいりこうたしゅう |
著者 | 竹久 夢二 Ⓦ |
文字遣い | 新字旧仮名 |
底本 |
「どんたく」 中公文庫、中央公論社 1993(平成5)年7月10日 |
入力者 | 星夕子 |
校正者 | Juki |
公開 / 更新 | 2000-10-12 / 2014-09-17 |
長さの目安 | 約 17 ページ(500字/頁で計算) |
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こはわが少年の日のいとしき小唄なり。
いまは過ぎし日のおさなきどちにこのひとまきをおくらむ。
お花よ、お蝶よ、お駒よ、小春よ。太郎よ、次郎よ、草之助よ。げに御身たちはわがつたなき草笛の最初のききてなりき。
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N[#挿絵]MU-NO-KI N[#挿絵]MU-NO-KI
N[#挿絵]YA SYANS[#挿絵].
OKAN[#挿絵] GA NATTARA
OKYA SYANS[#挿絵].
[#ここで横組み終わり]
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どんたく
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歌時計
ゆめとうつつのさかひめの
ほのかにしろき朝の床。
かたへにははのあらぬとて
歌時計のその唄が
なぜこのやうに悲しかろ。
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ゆびきり
指をむすびて「マリヤさま
ゆめゆめうそはいひませぬ」
おさなききみはかくいひて
涙うかべぬ。しみじみと
雨はふたりのうへにふる
またスノウドロツプの花びらに。
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紡車
しろくねむたき春の昼
しづかにめぐる紡車。
をうなの指をでる糸は
しろくかなしきゆめのいと
をうなの唄ふその歌は
とほくいとしきこひのうた。
たゆまずめぐる紡車
もつれてめぐる夢と歌。
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人買
秋のいり日はあかあかと
蜻蛉とびゆくかはたれに
塀のかげから青頭巾。
「やれ人買ぢや人買ぢや
どこへにげようぞかくれうぞ」
赤い蜻蛉がとびまはる。
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六地蔵
背合の六地蔵
としつきともにすみながら
ついぞ顔みたこともない。
でもまあ苦にもならぬやら
いつきてみても年とらず
赤くはげたる涎掛。
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越後獅子
角兵衛獅子のかなしさは
親が太鼓うちや子がおどる。
股のしたから峠をみれば
もしや越後の山かとおもひ
泣いてたもれなともどもに。
角兵衛獅子の身のつらさ。
輪廻はめぐる小車の
蜻蛉がへりの日もくれて
旅籠をとろにも銭はなし
あひの土山あめがふる。
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赤い木の実
雪のふる日に小兎は
あかい木の実がたべたさに
親のねたまに山をいで
城の門まできはきたが
あかい木の実はみえもせず
路はわからず日はくれる
ながい廊下の窓のした
なにやら赤いものがある
そつとしのむできてみれば
こは姫君のかんざしの
珊瑚のたまかはつかしや
たべてよいやらわるいやら
兎はかなしくなりました。
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鐘
村で名代の鐘撞男
月がよいのでうかうかと
鐘をつくのもつひわすれ
灯のつく街がこひしさに
山から港へではでたが
日がくれるのに山寺の
鐘はつんともならなんだ
村長さまはあたふたと
鐘撞堂へきてみれば
伊部徳利に月がさし
ちんちろりんがないてゐた。
アトレの馬ではあるまいし
鐘がならうがなるまいが
子供のしつたことでなし
…