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作品ID | 1157 |
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著者 | 漢那 浪笛 Ⓦ |
文字遣い | 新字旧仮名 |
底本 |
「沖縄文学全集 第1巻 詩Ⅰ」 国書刊行会 1991(平成3)年6月6日 |
初出 | 「琉球新報」1909(明治42)年6月6日 |
入力者 | 坂本真一 |
校正者 | 良本典代 |
公開 / 更新 | 2016-11-16 / 2016-10-28 |
長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
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無言
常によく見る女なれど、
心の欲を云ひいでむ、
また、語るべき機会もなく、
胸もどかしく、過ぎゆくか。
実にも二人がその中は、
砕けちりしく花硝子――
夕日の国の寂寥に、
絡みて沈む香の色。
せめては夢にその女と、
微笑つくる嬉れしさを、
ふかき思ひに抱きしめ、
無言の恋をくちづけむかな。
移香
ながき黒髪のその中に、
あやしく匂ふまなざしの、
たゆたひつゝもしなやかに、
見つむる色の、不思議さよ。
花毛氈の草のへに、
彩羽うちふる、楽の譜か、
姿すゞしく、移香の、
やをら心にしみいりて、
愛の泉にゆあみする、
新らしき、吾が酔ひごゝち。
真昼
子守唄、静かにうかび、
平安の木かげの夢を
ゆりさます、真昼のまひる。
吾れは今、椰子の実こぼる
南の、森をしたひて
草にふし、豆の葉とりて、
恋愛の、一つにもゆる
唇に、曲折りかへし、
若かき日の、心うたひぬ。
屠牛
嘯き吼ゆる黄牛よ、
目路にかゞなふ、屠殺場を
知るやしらずや、あな哀れ、
ものおぞましき足どりに、
牧場の草を、いでたちぬ。