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![]() かのひのうた【一】 |
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作品ID | 1202 |
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著者 | 漢那 浪笛 Ⓦ |
文字遣い | 新字旧仮名 |
底本 |
「沖縄文学全集 第1巻 詩Ⅰ」 国書刊行会 1991(平成3)年6月6日 |
初出 | 「琉球新報」1911(明治44)年10月30日 |
入力者 | 坂本真一 |
校正者 | 良本典代 |
公開 / 更新 | 2017-01-14 / 2016-12-09 |
長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
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南の国の黄昏れ、
空は紅き笑ひを残して静かなり。
想思樹の葉のねむたげにうなだれ、
かすかなるうめきをやする。
ああ淋しみ、心をなす、植民地の黄昏!
椰子の並木を縫ひて、
灯火は紅き花と見まがう。
その時我が耳に訪づれし悲歌の哀さよ。
[#挿絵]
小暗き森の奥に、
時々もれくる鬱憂の月影。
木の葉は眠りより醒めて、
あやしき夜色に顫へ出す。
忽ち響く恐ろしき獣の声!
よろづのものは皆醒めはてぬ。
声かれて歯白ろき、獣と思へば、
吾はたゞ恐怖の為めに伏して在るのみ!
[#挿絵]
白き墓たちならぶ国!
まへには荒磯の潮騒、………
絶えず訪づれ、
うしろには歓楽の歌きこえて、
また墓石を濡す、
哭泣の哀れも湧く。
こゝにして、悲しめる者相集ひ、
匂ひよき酒を椰子の実に盛り、
互に口をすぼめて飲む時の
うれしさよ!
死は遂に吾れを慰め、………
人生の極みをのぞき見る。
[#挿絵]
小鳥は、秋の空にさ迷ふ、
吾れは、一つの悲哀をとらへ、
小さき胸に隈なく乱る。
迷ひ、悲しみ、何の益ある、
小鳥よ来れ!手に手をとりて、
花咲き笑ふ南へさらむ。