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かの日の歌【二】
かのひのうた【二】 |
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作品ID | 1310 |
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著者 | 漢那 浪笛 Ⓦ |
文字遣い | 新字旧仮名 |
底本 |
「沖縄文学全集 第1巻 詩Ⅰ」 国書刊行会 1991(平成3)年6月6日 |
初出 | 「琉球新報」1911(明治44)年11月3日 |
入力者 | 坂本真一 |
校正者 | 良本典代 |
公開 / 更新 | 2017-01-14 / 2016-12-09 |
長さの目安 | 約 2 ページ(500字/頁で計算) |
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[#挿絵]
音なき秋の空をながめて、
木の葉は淡き吐息をもらし、
色みな、悲しきメロディなり。
時のまに/\泣きすぐる風に、
調べはいたく、狂ひわなゝき、
自然の胸の痛みは、更に深し。
黄ばめる木の葉は、翼をふるひ、
暗をもりたる、谷をみおろし、
渦まきながら、果ては消えゆく。
[#挿絵]
こゝちよき南の朝、
空は薔薇色の絹をのべ、
いろ鳥の歌は、若かき恋のごとく、
珠の響きをもてふるへり。
眼ざめし軟風、払手柑の花咲く
泉のほとりに、たわふれば、
かぐわしき名香、四方に散じ、
草葉にむすぶ露も、はら/\と散る。
あわれ、ユウカリ樹の下に、
たをやの髪を手にまきて、
若かき恋の別れを告げし、曙も、
今は、浮刻の如く、空にうつらふ。
[#挿絵]
なぎたる海の如き小夜なか。
香ひよき酒にさめて、
物すごき森の奥に、
極楽鳥の声をきくとき、
心は新らしき悲しみの眼をひらく。
南極星のなゝめに傾むき、
椰子の葉影にふるゝ頃まで、
色あせし唇に、「かの日の歌」をなせど、
たへなる音もなく、息は糸のごとく衰ろへ、
果敢なき涙して、喜びは吾れをさかりゆく。
[#挿絵]
涙ぐみたる植民地の空。
あぢきなき労働を終へて、
榕樹の影に息ふ黄昏よ!
息ふかき鐘の音は、愁人の声を偲ばせ、
収穫しさゝやかな穂束をながめて、
………かたパンを食ふに似たる生活を思ふ。