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![]() ばくまついしんかいこだん |
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作品ID | 1549 |
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副題 | 04 私の父の訓誡 04 わたしのちちのくんかい |
著者 | 高村 光雲 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「幕末維新懐古談」 岩波文庫、岩波書店 1995(平成7)年1月17日 |
入力者 | 山田芳美 |
校正者 | 土屋隆 |
公開 / 更新 | 2006-02-24 / 2016-01-18 |
長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
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さて、いよいよ話が決まりましたその夜、父は私に向い、今日までは親の側にいて我儘は出来ても、明日からは他人の中に出ては、そんな事は出来ぬ。それから、お師匠様初め目上の人に対し、少しでも無礼のないよう心掛け、何事があっても皆自分が悪いと思え、申し訳や口返しをしてはならぬ。一度師の許へ行ったら、二度と帰ることは出来ぬ。もし帰れば足の骨をぶち折るからそう思うておれ。
家に来るは師匠より許されて、盆と正月、一年に二度しかない。またこの近所へ使いに来ても、決して家に寄る事ならぬ。家へ帰るのは十一年勤めて立派に一人前の人に成って帰れ。……とこういい聞かされました。
そして、父は再び言葉を改め、
「今一ついって置くが、中年頃に成っても、決して声を出す芸事は師匠が許しても覚えてはならぬ。お前の祖父はそのために身体を害し、それで私は一生無職で何んの役にも立たぬ人になった。せめてお前だけは満足なものになってくれ」と涙を流して訓誡されました。
この事だけは私は今によく覚えております。