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批評は解放の組織者である
ひひょうはかいほうのそしきしゃである
作品ID15992
著者宮本 百合子
文字遣い新字新仮名
底本 「宮本百合子全集 第三十巻」 新日本出版社
1986(昭和61)年3月20日
初出「文化タイムズ」1948(昭和23)年11月2日号
入力者柴田卓治
校正者土屋隆
公開 / 更新2007-12-29 / 2014-09-21
長さの目安約 2 ページ(500字/頁で計算)

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本文より




 多喜二的みがまえということがいわれるとき、あの激しい弾圧の中で多喜二がひどくいびられ最後には殺されてしまったあのいさましい犠牲的な身がまえを要求されるように感じて、それを拒否しようとする動きがあるけれども、それには治安維持法という大きな恐しい影がつきまとっていて、その治安維持法への拒否が自分のあり方を歴史の上で生かそうとした多喜二的身がまえになっているので、この治安維持法へのびりびりした恐怖の根性を引出して日に干してよく殺菌しなければなにかおじおじしたものになってしまう。
 また文学戦線の問題も歴史的推進力を明瞭にしながら人権を守るという点をはっきりして、よりよく生きる可能の向上としておしすすめることで、民主的なものについて最後の線を守ることで前線に立つという最後の一線がなくてはならず、どなたもおいでなさいのお手々つないで式では前進しない。
 それから文学批評も小さなワクをぬけ出て、人民解放のためどういう意味をもつかを人民生活の諸関係と結びつけてときあかす組織者としての批評が望ましい。そのことは批評家もともども歴史を押し進める推進力を明瞭にするいとなみに協力しあうことが大切だ。ともかくもあの治安維持法によってあたえられたあの暗い暗い恐怖感、あれをなんとしてもとりのぞかなくてはならない。
〔一九四八年十一月〕



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