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この頃
このごろ
作品ID16009
著者宮本 百合子
文字遣い新字新仮名
底本 「宮本百合子全集 第三十巻」 新日本出版社
1986(昭和61)年3月20日
入力者柴田卓治
校正者土屋隆
公開 / 更新2008-03-29 / 2014-09-21
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)

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本文より




「お前は好い子だネエ」とあたまをなでられたあとでポカリとげんこつをもらう。
「ほんとうになんて可愛い子なんだろうネエ、まあこの形のいい頭は――」ポカリ又小さくて、固くて、痛いげんこをもらう。
 ままっ子が根性の悪い母親に可愛がられるような、こんなようなのがこの頃の私の心持で有る。
 うれしくて、又なさけなくって、愛しくて、にくらしい、のは、この頃の私の心で有る。
 なつかしいすきな本をじっと肉に喰い入るほどだきしめて、又急にいやになってようしゃもなく畳に投げつけるのも、美くしい蝶の羽根を半分ずつちぎって半殺のくるしみにもだえるのを見て、「クスリ」と人のわるい笑をもらしたあとで、あわててさき後れたきりしまの赤い雌蕊にその身を置いてやるのも、この頃の私の心のさせることで有る。
 人なみでない、と云うことは知って居るけれども、そうするのもやっぱりこの頃の私の心持で有る。



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