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デンマルク国の話
デンマルクこくのはなし |
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作品ID | 233 |
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副題 | 信仰と樹木とをもって国を救いし話 しんこうとじゅもくとをもってくにをすくいしはなし |
著者 | 内村 鑑三 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「後世への最大遺物 デンマルク国の話」 岩波文庫、岩波書店 1946(昭和21)年10月10日、1976(昭和51)年3月16日第30刷改版 |
初出 | 「聖書之研究 第一三六号」1911(明治44)年 |
入力者 | ゆうき |
校正者 | 吉田亜津美 |
公開 / 更新 | 2000-01-07 / 2014-09-17 |
長さの目安 | 約 19 ページ(500字/頁で計算) |
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曠野と湿潤なき地とは楽しみ、
沙漠は歓びて番紅のごとくに咲かん、
盛に咲きて歓ばん、
喜びかつ歌わん、
レバノンの栄えはこれに与えられん、
カルメルとシャロンの美しきとはこれに授けられん、
彼らはエホバの栄を見ん、
我らの神の美わしきを視ん。
(イザヤ書三五章一―二節)
今日は少しこの世のことについてお話しいたそうと欲います。
デンマークは欧州北部の一小邦であります。その面積は朝鮮と台湾とを除いた日本帝国の十分の一でありまして、わが北海道の半分に当り、九州の一島に当らない国であります。その人口は二百五十万でありまして、日本の二十分の一であります。実に取るに足りないような小国でありますが、しかしこの国について多くの面白い話があります。
今、単に経済上より観察を下しまして、この小国のけっして侮るべからざる国であることがわかります。この国の面積と人口とはとてもわが日本国に及びませんが、しかし富の程度にいたりましてははるかに日本以上であります。その一例を挙げますれば日本国の二十分の一の人口を有するデンマーク国は日本の二分の一の外国貿易をもつのであります。すなわちデンマーク人一人の外国貿易の高は日本人一人の十倍に当るのであります。もってその富の程度がわかります。ある人のいいまするに、デンマーク人はたぶん世界のなかでもっとも富んだる民であるだろうとのことであります。すなわちデンマーク人一人の有する富はドイツ人または英国人または米国人一人の有する富よりも多いのであります。実に驚くべきことではありませんか。
しからばデンマーク人はどうしてこの富を得たかと問いまするに、それは彼らが国外に多くの領地をもっているからではありません、彼らはもちろん広きグリーンランドをもちます。しかし北氷洋の氷のなかにあるこの領土の経済上ほとんど何の価値もないことは何人も知っております。彼らはまたその面積においてはデンマーク本土に二倍するアイスランドをもちます。しかしその名を聞いてその国の富饒の土地でないことはすぐにわかります。ほかにわずかに鳥毛を産するファロー島があります。またやや富饒なる西インド中のサンクロア、サントーマス、サンユーアンの三島があります。これ確かに富の源でありますが、しかし経済上収支相償うこと尠きがゆえに、かつてはこれを米国に売却せんとの計画もあったくらいであります。ゆえにデンマークの富源といいまして、別に本国以外にあるのでありません。人口一人に対し世界第一の富を彼らに供せしその富源はわが九州大のデンマーク本国においてあるのであります。
しかるにこのデンマーク本国がけっして富饒の地と称すべきではないのであります。国に一鉱山あるでなく、大港湾の万国の船舶を惹くものがあるのではありません。デンマークの富は主としてその土地にあるのであります、その牧場とその家…