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書簡(Ⅰ)
しょかん(いち)
作品ID24414
著者寺田 寅彦
文字遣い新字新仮名
底本 「寺田寅彦全集 第一巻」 岩波書店
1996(平成8)年12月5日
初出「アララギ 第十九巻第十号 島木赤彦追悼号」1926(大正15)年10月10日
入力者Nana ohbe
校正者青野弘美
公開 / 更新2006-11-23 / 2016-02-25
長さの目安約 2 ページ(500字/頁で計算)

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本文より




 拝復。島木さんの事について何か書くようにとの御手紙を頂きましたので、考えてはみましたが、私は同氏から稀に御手紙は頂戴しておりましたものの、御目にかかったのは前後にただ一度だけ、それも宴会の席上でちょっと御挨拶をしたばかりでありまして、同氏の追憶と云っては別段に申上げるほどの資格も御座いません。
 ただ何か強いて申上げようとすれば次のような事で御座います。
「島木赤彦」「久保田俊彦」という名前や、また作歌文章などを通して私の自然に想像していた島木さんは、どちらかと云えば小柄な体格をもった人でありましたが、御目にかかってみると私の想像よりはずっと大きい体格のように思われました。
 それからこの夏八月始めて諏訪湖畔を汽車で通りました、知人に諏訪の人が数人あるので特に興味があって汽車の窓から風景や民家の様式などに注意して見て来ました、あの辺の家屋の屋根の形や色の配合などの与える一種特別な感じがありますがその感じの中には私の考えている島木さんの感じとかなりよく共通したものがあるように思いました。どういうところが相通じているかは分析出来ませんが、何となくそう思われました。
 こんな取止めもない事では雑誌に載せて頂くのは如何かと存じますが御返事までに申上げます、どうか悪しからず願います。草々。(九月二日斎藤茂吉宛)
(大正十五年十月『アララギ』)



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