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“MONICO”
モニコ |
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作品ID | 2568 |
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著者 | 与謝野 寛 Ⓦ |
文字遣い | 新字旧仮名 |
底本 |
「スバル」 昴発行所 1912(明治45)年4月号 |
入力者 | 武田秀男 |
校正者 | 門田裕志 |
公開 / 更新 | 2003-02-12 / 2014-09-17 |
長さの目安 | 約 2 ページ(500字/頁で計算) |
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MONICO ! MONICO ! TR[#挿絵]S JOLIIE !
今夜もモニコで飲み明そ。
派手な巴里に住みながら、
MONMARTORE に住みながら、
一人で寝るのも気が利かぬ。
おお、行く程に、さる程に、
人をば促る火の明り。
赤い嵐がそよそよと
恋に焦れて吹くやうな
扇の形の火の明り。
合せ鏡の中にある
曲れる、曲れる、梯子段、
一段のぼればよろよろと、
二段のぼれば恐らくは
生きて帰らぬ「夢」の塔。
二時を過ぎたる真夜中も、
此処は SABBAT のまつさかり。
土耳古、仏蘭西、西班牙、
意気な BASSE に CASTAGNETTE、
RYTHMES D'AMOUR' しよんがいな。
赤い裾の踊子、
あれ、まんまろく拡がれば
時を択ばぬ花が咲き、
黄金と、紫金と、銀の
虹をば飜すあの上衣。
そこの隅ではひそひそと
ちょいと此間に一 BAISER。
見て見ぬ振のてれかくし、
前の杯を軽く取る
此処のみじめな VERLAINE
とまどひしたか、UNE BEAUT[#挿絵]、
たとへ虚偽でも、浮気でも、
わたしの膝にのしかかり、
甘い煙草の口うつし、
どうして其れが憎からう。
霰、霰、真赤な霰、
カスタネツトの降るままに、
執つて、抱へて、引くままに、
吸ひつく様な、飛ぶ様な
とろける様な一踊り。
(一九一二年三月七日の夜巴里にて)