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ひとごとではない
ひとごとではない |
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作品ID | 2735 |
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副題 | ソヴェト勤労婦人の現状 ソヴェトきんろうふじんのげんじょう |
著者 | 宮本 百合子 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「宮本百合子全集 第九巻」 新日本出版社 1980(昭和55)年9月20日 |
初出 | 「婦人戦旗」(「戦旗」臨時増刊)1931(昭和6)年5月号 |
入力者 | 柴田卓治 |
校正者 | 米田進 |
公開 / 更新 | 2002-11-19 / 2014-09-17 |
長さの目安 | 約 5 ページ(500字/頁で計算) |
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ヨーロッパ戦争後、世界に婦人労働者の数は非常にふえた。
日本では、男の労働者のほとんど半分の数だけの労働婦人がいる。それがどんな賃銀で働かされているかと云えば、誰よりも、読者自身がしっている! 男のとる金の半分ぐらいの金で、労力の搾取は男なみか、却ってそれよりひどいぐらいにされているんだ。
最近のブルジョア産業合理化は、世界に四千万ちかい失業者をあふれ出させた。日本にだけだって、二百万人ばかりの失業者がいる。一九二九年の統計だと、日本全体の労働者は四百八十三万千八百十五人ということだ。すると、その半数は、失業している。資本主義のゆきづまりはひどくなるばっかりで、行手にあてのない世界四千万の失業者とその家族とが、目の前に餓死を眺めて坐っている。
云うに云えないそのプロレタリアートの苦しい有様を利用して、資本主義国では、不景気がつのればつのるほど、弱い婦人労働者と年少労働者が、ひどい労働条件で、資本家の利潤のため搾[#「搾」に「×」の注記、底本の親本「河出書房 宮本百合子全集」で伏字を起こした個所]られるんだ。
自覚あるプロレタリアート婦人は、悪化するこのブルジョアの搾取を、だまっているはずはない。去年、モスクワで、第一回婦人労働組合会議が行われた。資本主義経済恐慌によって起っている世界的な婦人労働者搾取に対して、世界の女が腕を組み、赤色労働組合の指揮の下に闘争する相談のためにあつまったのだ。
一九一七年の十月革命によって、プロレタリア革命[#「革命」に「××」の注記]をやりとげ、解放されたソヴェトの婦人労働者は、熱心に中心となって、この世界の姉妹の問題をとりあげてる。
ソヴェト同盟内の勤労婦人は、革命によって、生産をプロレタリアートの手で支配し、社会主義的生産に従事するようになると同時に、あらゆる人間的な権利を獲得した。
第一、同じ技術をもっていれば男も女もまったく同等の賃金をとる。
社会的生産労働者として男も女も同じである以上、男の労働者がもっているいろんな法律、政治上の権利は当然女にもある。
ソヴェト千百二十万人の労働組合員の中、二割七分五厘=三百七万八千余人は婦人労働者だ。いろんな工場の、工場委員には女がうんといる。金属工場で、婦人労働者の議長と書記とに指導されているところさえある。
ブルジョア婦人参政権論者をガッカリさせる勢で、ソヴェト・プロレタリアート婦人は、ソヴェト役員に選挙されつつある。だから、ソヴェト同盟では、往来を腕から籠をブラ下げ粗末ななりで歩いてる一人の女でも、うっかり馬鹿にはされない。彼女は工場で工場委員会の文化委員をつとめ、町ソヴェトの役員で、ガッチリした消費組合員、労働組合員であるのが決して珍しいことじゃあないんだ。ソヴェトでは、誰一人、ひとの儲けのために働かされているものはない。生産がたかまって、国が豊かにな…