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社会主義リアリズムの問題について
しゃかいしゅぎリアリズムのもんだいについて |
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作品ID | 2853 |
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著者 | 宮本 百合子 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「宮本百合子全集 第十巻」 新日本出版社 1980(昭和55)年12月20日 |
初出 | 「文化集団」1933(昭和8)年11月号 |
入力者 | 柴田卓治 |
校正者 | 米田進 |
公開 / 更新 | 2003-02-09 / 2014-09-17 |
長さの目安 | 約 6 ページ(500字/頁で計算) |
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第一次五ヵ年計画のおおうべくもない達成、ひきつづき発表された第二次五ヵ年計画の基本的方針とともに、ソヴェト同盟がプロレタリア文学運動の領域において、社会主義的リアリズムの問題を国際的に提起したことはわれわれにとって実に興味あることです。
ソヴェト同盟で、プロレタリア文学の創作方法におけるこの問題が起った社会的根拠は、第一次五ヵ年計画の成果によってプロレタリア文学運動の分野にあっても、他の生産部門においてと同様、多数の新しい労働者、集団農場員幹部をもつようになったこと、労農文学通信員からおびただしい新進作家が輩出して来たこと、及び、スターリンが演説の中でもいっている通り、旧インテリゲンチア、作家団でいえば「鍛冶屋派」や「同伴者」たちが、現実の社会主義建設の生活からの教訓によって、プロレタリアートの側に集団として移って来たことなどにあります。マクシム・ゴーリキイが六十余歳の老齢をもって、去年の革命第十五周年記念祭の時党員となった事実は、私どもの記憶に新たな感銘として印されている。
ところで、これらのプロレタリア新進作家や旧インテリゲンチア作家たちは、それぞれ多種多様な発展の段階にあって、プロレタリアートの世界観とその複雑多岐な実践に結びつけられ建設に寄与するものであって、社会主義建設の見とおしと方向において一致していても、必ずしも皆が皆いわゆる卓抜なるマルキシストではないわけです。
ソヴェト同盟の指導者たちは、生産・政治・文化建設の面におけるプロレタリアートの勝利の確立とともに、ほうはいと高まった大衆のうちのプロレタリア化の可能性=文学においてはプロレタリア文学創造のより豊富な可能性を、十分指導し、開花させるために、すでに従来の組織ではこの必要を充足し得なくなった「ラップ」の発展的解消を提唱し、創作方法のスローガンとして社会主義的リアリズムをかかげ、広汎に強力に、いきいきと、すべての作家よ、めいめいの実践をとおして「社会主義建設を描け」と云っているわけです。
以上の簡単な説明でも明らかなとおり、この「社会主義リアリズム」の問題は、プロレタリアートの階級性の抹殺の上に立てられているものではなく、ソヴェト同盟の指導者たちが、一九二一年の新経済政策以来プロレタリア文学運動を国際的規模において発展せしめて来た一貫した指導方針=文学の面におけるプロレタリアートの主導性の確立の一つの現実的形態として表れている問題です。「創作方法における唯物弁証法」のスローガンの社会的実践によって導き出されて来た新しい労働者農民作家群の輩出、社会主義建設がすすむにつれて顕著なインテリゲンチア作家の階級的移行、有能な新幹部の多種多彩な文学的活動と、より広汎な人民層のプロレタリア化の可能性を、より高い見地からマルクス・レーニン主義的に発展実現させるために、過去数年間の成果と欠陥とが大胆…