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金のくびかざり
きんのくびかざり
作品ID3045
著者小野 浩
文字遣い新字新仮名
底本 「赤い鳥傑作集」 新潮文庫、新潮社
1955(昭和30)年6月25日、1974(昭和49)年9月10日29刷改版
初出「赤い鳥」1928(昭和3)年12月号
入力者林幸雄
校正者鈴木厚司
公開 / 更新2001-10-31 / 2014-09-17
長さの目安約 7 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

        一

 よし子さんのお家も、あすは、クリスマスです。
 毛なみの、つやつやした、まっ黒いネコは、夜どおし、煙突のてっぺんにすわって、サンタクローズのおじいさんが、このお家をまちがいなく見つけてくれればいいがと、黄色い目をひからせて、見つめていました。よし子さんは今夜は、きっと、おじいさんが、あたしのほしくてほしくてたまらない、小さな金のくびかざりを持って来てくれるにちがいないと言って、おねんねをしました。
 イヌは、家の中の煙突の下を、ふさふさしたしっぽで、きれいにお掃除をしました。せっかくサンタおじいさんが、金のくびかざりをもって煙突から下りて来ても、そこがあまりきれいでなくては、いやな気持になって帰ってしまうかもしれないからです。
「オウムさん、あなたはこのクリスマスに、よし子さんには何をして上げるの。」
と、イヌは、籠の中のオウムに声をかけました。
「私は、お目ざめのうたをうたって上げるわ。」と、オウムは言いました。
「それは毎朝のことで、別にめずらしくもないじゃないの。」
「でも、いつものうたとはちがうのよ。あたしが、さっき、つくったばかりの、それはいいうたなんですの。」と、オウムは言いました。
「ふふん、うたなんか、うたったって、クリスマスの役には立たないや。ごらんよ、ぼくたちのやってることを。ネコがこの上にいて目を光らせていなかったらこの家は空から見えないし、僕がここをきれいにしておかなければ、おじいさんははいって来やしないよ。僕たちのすることは、こんなものだ。」
 イヌは、しっぽを振って、大いばりにいばりました。
「あたしだって、何かしたいのだけれど、でも、籠の中にいるんですもの。あたしにはうたをうたうことしか、出来ないわ……。今に、いい節がつくんだけれど。」
 オウムは、さびしそうに、小さな声でこう言いました。イヌは、それには、ヘんじもしないで、
「では、僕は、おじいさんが来るまで、一寝入りするんだ。」
 こう言って、ごろりと、横になってしまいました。

        二

 お部屋の中はしいんとして、夜が、だんだんふけていきました。
 しばらくすると、屋根の上に、みしみしという足音が聞えました。イヌは、はっと目をさまして聞耳を立てました。オウムは、ずっと、ねないで、まっていたのです。
「掃除はきれいに出来たかな。」
 サンタクローズのおじいさんは、こう言いながら、えんとつの上にいたネコを背中にしょって、すらりと、お部屋へ下りて来ました。そして、ポケットから、かきつけを出して、
「ええッと、よし子さんは何がほしいのだったかな。」と、言い言い読みかえしました。
「私の歩き人形にはお靴を二つ。
 白い熊ちゃんには毛皮の帽子を。
 ネコにはちりちりと鳴る鈴を。
 イヌにはぴかぴか光る首輪を一つ。
 オウムにはあたらしいうたのふしを…

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