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女性週評
じょせいしゅうひょう
作品ID3180
著者宮本 百合子
文字遣い新字新仮名
底本 「宮本百合子全集 第十四巻」 新日本出版社
1979(昭和54)年7月20日
初出「東京朝日新聞」1940(昭和15)年6月20、29日号、7月6、13、20日号
入力者柴田卓治
校正者米田進
公開 / 更新2003-08-05 / 2014-09-17
長さの目安約 7 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

        大雷雨

 大雷雨の空が夕焼のように赤らんでいるのを大変不思議に思いながら寝て、けさ新聞を見たら、落雷で丸之内の官衙が九つ灰燼に帰した出来ごとを知った。愛する東京よ、東京よ。何と自然の力の下に素朴な姿を横たえていることだろう。

        青少年を護る

 青少年工がこの頃の景気の中で、とかく誘惑に負け、その青春を蝕ばまれるのをふせぎ又指導するために、厚生省が産業報国の機関を動員して、優良会員数名ずつを行動隊に組織し、工場地帯、玉の井、亀戸その他の盛り場へ送り、危い一歩の手前で若者たちを目覚ましてやる方策が決定した。結構なことだと思う。
 お互に故郷を出て働いている身であれば、それらの優良行動隊員にも、工場生活の青少年の心の内は十分の実感でわかる筈だろう。ただお目付役の威厳で、目の前でその小路を引きかえさせるばかりでは、若い心の何かの渇きや遣り場のなさがそのまま高尚な希望へ変るものでないことも、実感でわかっていよう。若い心の同感と鼓舞と共々な努力として、行動隊員が活動することを衷心から期待する。

        不良への警告

 真面目な親と娘たちにとって毎年のぞましからぬシーズンのおくりものがある。それは不良青年に対する警告である。けれども息子たちの母は同じ意味で不良な娘への警告もよみとっているのではなかろうか。不良な男女は根絶され難い。親は何をよりどころとして子供らを信じ、若い娘は自身にどんなよりどころを見出したらよいのか。虫が好かない、というしゃれた表現を日本人は持っている。人間を直感するこの虫の好みが高められ明瞭になりさえすれば、誘惑というきまりの悪い言葉は可愛い娘たちのぐるりから消えるのである。

        日本一健康児

 日本一の健康児弘君と小枝子さんのすくすくとはぐくまれた体と心の心持よさ。よろこび溢れている親御さんたちの笑顔、誰しもこの少年少女の前途を祝福してやりたい。
 今年第十一回目であれば、第一回の日本一たちはもう二十三四歳になっていよう、どんな環境と状態で嘗ての日本一健康児たちは今日を生活しているだろうか。それが知りたい。
 人間の成長と環境との関係を真剣に考える人々は、お祝の儀式がすんだ後の永い歳月を子供たちがいかに閲して行くかという人生の事実にこまやかな視線を向けずにはいられまい。

        目に余る贅沢

 金銀の使用がとめられている時代なのにデパートの特別売場の飾窓には、金糸や銀糸をぎっしり織込んだ反物が出ていて、その最新流行品は高価だが、或る種の女のひとはその金めだろうけれどいかつい新品を身につけて不思議もなさそうな面ざしであった。この初夏に一反百円のお召単衣はおどろくに足りないもののように現れていたし、レース羽織というものも出来た。
 それらはいずれも、金はあるところにはあるもんなん…

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