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三つの民主主義
みっつのみんしゅしゅぎ |
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作品ID | 3260 |
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副題 | 婦人民主クラブの立場に就て ふじんみんしゅクラブのたちばについて |
著者 | 宮本 百合子 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「宮本百合子全集 第十五巻」 新日本出版社 1980(昭和55)年5月20日 |
初出 | 「婦人民主新聞」第一号、1946(昭和21)年8月22日号 |
入力者 | 柴田卓治 |
校正者 | 米田進 |
公開 / 更新 | 2003-09-17 / 2014-09-18 |
長さの目安 | 約 5 ページ(500字/頁で計算) |
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これまでの日本の婦人は、よろこびも悲しみも自分のめぐり合わせとして孤立して生きて来た。そういう生活を、もっとひろい社会の動きの中に解放して婦人の生活を明るくつよく創造の力にみちたものにしてゆくと共に日本の民主社会の健全な生長のために協力したいというのが、婦人民主クラブの初めからの希望である。
僅か七八人の小さい集りとして発足してから半年ほど経った今日は、全国に数百人のクラブ員ができ、婦人民主新聞が発刊される手筈になったし、秋からクラブと特別な関係をもつ雑誌も発行されるようになった。そして、私たちがまだ未熟で、クラブとしての運営の形も十分ととのいきれないうちに、日本の社会の事情は目まぐるしく前進した。そして、本当に婦人たちの自発的な気もちから生れた婦人団体というものが日本に殆どないために、新しい日本建設の一つの要素として多方面の接触をもつようになって来た。
この事情は、クラブの社会的な存在意義というものを、いつとはなしくっきりと彫り出して来た。これからは、益々いろいろな文化団体との連繋もふえ、活動の面もふえ、若い新鮮なクラブ員の能力が十分発揮されるようになって来るだろう。これはうれしいことだと思う。それにつけて私たちクラブ員は、一つのことをはっきり理解しておいていろいろの場合クラブとしての処置や判断を誤らないようにしたい。私たちは何はともあれ婦人民主クラブ員なのだから、日本の今日の民主主義の歴史的な性質、方向などについて、簡単ながら間違いない理解をもっていた方が便利だろう。
今日、世界には三つの民主主義がある。ブルジョア民主主義、新民主主義、社会主義的民主主義。アメリカ、イギリス、フランスの諸国は、歴史の歩みのうちにすっかり封建的なものをすて去ったブルジョア民主国家であり、日本、中国等は現在新民主主義の段階にあるし、ソヴェト同盟は、社会主義的民主主義の社会をもっている。
新民主主義の社会というのは一つの歴史の時期の上に、二様の歴史の発展の波がうちよせているような中国や日本の、今日より明日への姿である。経済、政治すべてに封建の力がつよく支配していて、それを出来るだけ早くとりのぞき、まず近代のブルジョア民主主義を完成しなければならないのだから中国、日本などの歴史では、ヨーロッパ諸国で十八世紀、十九世紀の間にブルジョア民主主義を完成した市民社会、ブルジョアジーの階級としての確立がなかった。
日本では明治維新以来次第に銀行資本と産業資本の結合した独占資本の形は発達したが、生産の格式はおくれた半封建の中小企業を基礎とし、軽工業を基礎とし、植民地賃銀といわれる低賃銀で男女の勤労者を働かして来た。土地の関係も徳川時代と変りない地主小作の関係がつづき、年貢を米、麦等現物でおさめ、耕作方法も機械化されていない。今日までの政治で、一般人民がどんなに無権利であったかを思…