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チャールズ・オーガスタス・ミルヴァートン
チャールズ・オーガスタス・ミルヴァートン |
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作品ID | 3393 |
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原題 | THE ADVENTUER OF CHARLES AUGUSTUS MILVERTON |
著者 | ドイル アーサー・コナン Ⓦ |
翻訳者 | 枯葉 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「"The Return of Sherlock Holmes"所収 "The Adventure of Charles Augustus Milverton"」 |
入力者 | 枯葉 |
校正者 | |
公開 / 更新 | 2001-06-12 / 2014-09-17 |
長さの目安 | 約 35 ページ(500字/頁で計算) |
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私がこれからお話する事件が起きてから何年か経つ。それでもまだ口外するにあたり気後れしないわけにはいかない。長い間、どれほど配慮した書き方をしようとも、この事件を公にすることはかなり難しかったであろう。だが、主要な関係者は人間の法律のおよばないところにいるのだから、適切に手心を加えておけば、だれひとり傷つけないようなやり方でお聞かせできるかもしれない。これは、ミスター・シャーロック・ホームズと私の双方の経歴にしるされた、まったくユニークな経験の記録である。私は日付などの事実を隠す。それによって、実際の事件を追跡してみることができなくなるかもしれないが、その点どうかお許し願いたい。
ホームズと私は夕方の散歩に出かけ、6時に、凍てつくような冬の夕暮れからもどってきた。ホームズがランプに火をつけると、テーブルのうえに1枚のカードが載っていた。それに目を通したホームズは、悪態とともに床に投げ捨てた。私が拾いあげて読んでみると――
代理業 チャールズ・オーガスタス・ミルヴァートン ハムステッド、アップルドア・タワーズ
「誰?」と私はたずねた。
「ロンドン1の悪党」と、ホームズは腰かけて足を暖炉の方に伸ばしながら答えた。「裏にはなにか?」
名刺を裏返してみた。
「6:30に伺う――C. A. M.」私はそれを読み上げた。
「ほう! もうそろそろだな。ワトスン、動物園でけばけばしい毒蛇なんかを見たときにさ、薄気味の悪い、ぞっとするような感じがするだろ? あのおぞましい目やおそろしげなのっぺりした顔を見ると。ミルヴァートンを見るとちょうどそんな気分になるんだよ。ぼくはこれまで山ほど殺人犯と渡り合ってきたけど、あの男ほどむかむかするやつはいなかったね。けれども、あいつとの取引は避けられない――実はね、やつをここに呼んだのはぼくなんだ」
「でも誰なんだ、そいつは?」
「教えてやるとも、ワトスン。こいつはあらゆる強請屋の王者だよ。ミルヴァートンに秘密を握られてしまった男はね、まあ女のほうが多いんだけど、もうどうにもならないんだ。顔は笑っていても心は無慈悲そのもの。そういう態度で被害者をしぼりにしぼり、干物にしてしまう。その道にかけては天才だよ、もっとまともなことをやってても名をあげてたと思うね。そのやりくちはというと、まず富や地位のある人々が書いた手紙に大金を支払う用意があるって噂を流す。そういう手紙は、不実な付添人とかメイドとかからでてくることもあるけれど、その女性が信頼と愛情を注いでいる当のえせ紳士からでてくることも多いんだな。やつは金を出し惜しんだりはしない。偶然知ったことだけど、たった2行の走り書きを持ちこんできた従僕に700ポンドもだしてやったこともある。結果、ある名家が破滅した。金でなんとかなるものならなんだってミルヴァートンのもとに転がり込むようになっててね。こ…