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部屋の中
へやのなか |
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作品ID | 3400 |
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著者 | 尾形 亀之助 Ⓦ |
文字遣い | 新字旧仮名 |
底本 |
「尾形亀之助詩集」 現代詩文庫、思潮社 1975(昭和50)年6月10日 |
初出 | 「現代文芸 第五巻第二号」1928(昭和3年)3月 |
入力者 | 高柳典子 |
校正者 | 泉井小太郎 |
公開 / 更新 | 2008-05-23 / 2014-09-21 |
長さの目安 | 約 2 ページ(500字/頁で計算) |
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雨が降つてゐる。[#挿絵]が啼いてゐる。
×
何時の間にか雨が止んでゐる。私は机の前に座つてゐる。朝、床の中で新聞を読んだ他何もしてゐない。氷のやうなものが食べたい。
×
淋みしい「人生興奮」。
ながいことかゝつて火鉢に炭をついでゐた。
僕は何か喜びにあひたい。このまゝ日が暮れてしまつては、口ひとつきくことが出来ない。
×
僕はいつものやうに寝床に入つてゐる。そして、電燈を消さうか消すまいかと思案してゐる。もう床へ入つてから二時間はたつてゐる。
×
月のない夜は暗い。窓に何処かの門燈がうすく映つてゐる。
ま夜中よ
このま暗な部屋に眼をさましてゐて
蒲団の中で動かしてゐる足が私の何なのかがわからない。
×
この頃僕は日記をつける気にはなれない。たのまれて書いてゐるのだ。僕はこの頃きせるで煙草をのんでゐる。時々詩を書いてゐる。
「この頃我が胸に燃え上つたものはみな、すべて再び我が胸の深みに沈んで行け……」といふツルゲエネフの「ファウスト」の終りにある言葉を思ひ出してゐる。
(一九二八年一月×日)
(現代文芸第五巻第二号 昭和3年3月発行)