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悔なき青春を
くいなきせいしゅんを |
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作品ID | 3459 |
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副題 | 現場録音No.4 No.5をよんで げんばろくおんなんばーよんなんばーごをよんで |
著者 | 宮本 百合子 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「宮本百合子全集 第十六巻」 新日本出版社 1980(昭和55)年6月20日 |
初出 | 「福鉄労報」第41号、国労福知山地方本部、1948(昭和23)年4月1日発行 |
入力者 | 柴田卓治 |
校正者 | 磐余彦 |
公開 / 更新 | 2003-10-24 / 2014-09-18 |
長さの目安 | 約 7 ページ(500字/頁で計算) |
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皆様の現場録音を拝見して、きょうの真面目な若い女性の心持に同感いたしました。いくつかの感想もあります。女子職員の声に出されていた質問とその答について順々にとりあげてゆきましょう。
(1)[#「(1)」は縦中横] 今年度の計画という大きな質問には、どなたもできるかできないかわからない答をさけていられます。ほんとに、私たちは自分の心の中でだけ希望しているけれど、実現のたしかでもないことを他人にふいちょうしたくない心をもっています。落付いた心はそういうものです。でも、ふいちょうしないにしても、あなたがた一人一人の胸のうちにはどんな計画があるでしょう。みんな、毎日を無駄にすぎるという感じなしに生きようとしていられます。悔いなく楽しく努力して、さっぱりした気持に生きようとしています。それには、やっぱり勤めている女性とすれば、自分の職場で今年はどうしたい、働く女性としてどう向上してゆくか、という問題もはっきりとりあげられると思います。若い女性という誇や希望には、はっきりと社会に働く若い女性としての力づよい裏づけがあるのですから。それでこそノラクラ令嬢の身につけていない若さの美しささえあるのですから。職場の内での今年の計画、職業上の向上のための今年の計画にふれた答は、もっともっと多くなるべきです。篠山口駅の電話掛の方が「女性としての言葉づかい」を今年の計画に入れていられたのは味わいのふかいことですし、検車区の雑務手として働いている方が、男女同等の賃金に対して女性の責任を感じ、管理部の雑務手の方が、職場内の計画として、やはり女性の働く者としての責任を感じ直そうとしていられるのは心をひきます。
第一の答と第三の答は自然つながっています。教習所に入ろうとしている方は、女性の社会的地位の向上について考えているし、働く若い女性の誇として実力を高めたいと思う方は、自然と経済の問題も知ろうとしています。
働く若い女性であるというよろこびと誇とはあなたがたの青春を一層かがやかしいものにするはずです。ただ若い娘というだけでは持てないゆたかさと実力があるはずです。結婚して、母になったとき、やはりその経験は子供にとって誇らしいものにもなるでしょう。
(2)[#「(2)」は縦中横] ほとんどみんな読書が趣味の一つです。本がたかくて何と不便でしょう。組合の文化部に文庫がありますか? 回覧雑誌のグループをこしらえておいでですか? もしまだでしたらおつくりになることです。どんな本をおよみですか? 文芸ものが第一でしょう。けれども、みなさんが女性の幸福を求めていらっしゃるし特に(4)[#「(4)」は縦中横](5)[#「(5)」は縦中横]の問題では切実な意見をおもちですから、日本の女性が社会の間でどんな生きかたをして来たかということをもう一度考えさせるような婦人問題の本を読むことも意味があると思…