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科学論
かがくろん |
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作品ID | 3590 |
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著者 | 戸坂 潤 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「戸坂潤全集 第一巻」 勁草書房 1966(昭和41)年5月25日 |
初出 | 「唯物論全書 第一巻」三笠書房、1935(昭和10)年10月18日 |
入力者 | 矢野正人 |
校正者 | 土屋隆 |
公開 / 更新 | 2008-07-27 / 2014-09-21 |
長さの目安 | 約 287 ページ(500字/頁で計算) |
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目次
科学論
序
再版序
一 科学の予備概念
二 科学と実在
三 科学の方法(その一)
四 科学の方法(その二)
五 科学と社会
六 科学的世界
[#改ページ]
序
科学というものが一纏めにして、一体どういうものであるかを、この書物は分析するのである。そこで、科学自身の脈絡を、なるべく生きたまま取り出して見たいと私は考えた。だがその点あまり成功したとは考えられない。もしこの小さな書物に特色というべきものがあるとすれば、それは、自然科学と社会科学の二つの科学に渡って、その同一と差別と更に又連関とに心を配ったという点だろう。
体裁にややテキスト風の処もあるが、併しあくまで、科学そのものに就いての評論という観点を守ろうと心がけた。この錯雑紛糾を極めた生活と思想との世界に於て、私は「科学」の性能に、限りない期待を有つからである。
今から丁度七年前、私は『科学方法論』(岩波書店)を書いた。今度の出版は、この旧著が立っていた立脚点を相当の程度に改変すると共に、出来るだけその規模を拡大したものに他ならない。だが旧著の内に展開されたシステムと見解の或るものには、依然として利用すべきものがあったと思う。この『科学方法論』が併せ読まれるならば、著者の幸いである。――なお今度の書物の思想内容は、すでに之まで出版した私の諸著述や論文の中に、分散して見出されるものが大部分なので、読者が次の拙著も参考にして呉れるならば、本望である。――『イデオロギーの論理学』(鉄塔書院)、『イデオロギー概論』(理想社出版部)、『現代哲学講話』(白揚社)、『技術の哲学』(時潮社)、『日本イデオロギー論』(白揚社)。
結局に於て時間が不足であったため、論証を省いた処や杜撰な個処が少くない。他日訂正したいと考える。――なお参考書や文献は、機会々々に触れたと思うので、巻末には別に文献目録をつけなかった。そのため載せるべくして機会を得なかったものも多い。
一九三五・一〇
東京
戸坂潤
再版序
第二回の予約配本になるのを機会に、少なからぬ誤植を訂正して、再版の体裁にすることにした。出来る限りの訂正をした心算であるが、まだ遺漏があるかも知れないので、今後も読者の助力を乞う次第である。
私のこの『科学論』に就いて、読者から批評や意見や質問を受け取ったのが数件に及んでいるが、どうも暇がなくて一々回答が出来ずにいるのは心苦しいことだ。書店の希望もあるので、この全書〔『唯物論全書』〕の「月報」でも利用して、順次に答えて行きたいと考えている。
一九三六・二
著者
[#改ページ]
一 科学の予備概念
広い意味に於て科学というのは、単に分科の学又は特科の学としての所謂「科学」(=特殊科学)だけを指すのではなくて、一般に学問のことを指すのである。処が学…