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女学生だけの天幕生活
じょがくせいだけのキャンプせいかつ |
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作品ID | 3718 |
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副題 | アメリカの夏季休暇の思い出 アメリカのかききゅうかのおもいで |
著者 | 宮本 百合子 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「宮本百合子全集 第十七巻」 新日本出版社 1981(昭和56)年3月20日 |
初出 | 「サンデー毎日」1922(大正11)年7月30日号 |
入力者 | 柴田卓治 |
校正者 | 磐余彦 |
公開 / 更新 | 2003-11-09 / 2014-09-18 |
長さの目安 | 約 2 ページ(500字/頁で計算) |
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アメリカの女の夏の生活といっても、私の接触した範囲が極めて狭いので申上げるほどのことはありませんが……しかし、あの如何にも夏の休みを楽むような、愉快な女学生の生活はほんとに羨ましいと思います。あちらの学校はたいてい六月のはじめから三月位ありますので専門学校の女学生は夏季講習を聴く者と、避暑に出かけるものとに分れます。
避暑の方法はやはり日本と同じで海か山へ行くのですが、しかし海へ行くとしても只ゆくばかりでなく、いろいろな戸外ゲームたとえば射的や乗馬などを全く何もかも忘れて愉快に無邪気に数日乃至数週間を過ごします、それに近頃では天幕生活が非常によろこばれて女学生などは男気なしの仲のいいお友達数名と一緒に思う場所へ参り、全く必要なものばかりで、驚くほど簡単な自然的の生活をいたします。天幕を建てる場所は海でも山でも、その土地の所有者に断れば殆ど自由ですから、毎年変った土地へ、思うさまに行くことが出来るわけです。
日本ではまさか女ばかりでそんなことも出来ますまいが、罐詰にバタその他必要な程度のものの入った小さなバスケット一つに、折畳みの簡単なベッドに毛布これだけで自分が望む土地への避暑ができるのですから頗る手軽で愉快な方法です。海辺はどうも日本も同じで余り風儀がよくないため、やはり山へ行く人の方が多いようです。都会の夏を避けて溪流の音を聞きながら全く自然に親んで、簡単な「必要の生活」をおくるということは考えただけでも愉快ではありませんか。
金に飽かせて随分馬鹿な避暑旅行をするアメリカの中流階級以上の人達の中にもこの全く自然なキャムプ生活を楽む人が年々殖えると聞きます、あちらでは避暑としてのキャムプ生活は男女学生に限らずあらゆる階級を通じて全く家庭的の避暑法となっていますが、キャムプ生活に炊事が楽しい仕事の一つであるだけに、何等かの方法で日本にも行われるなら、すべての階級を通じて女を主として理想的の避暑法ではないかと存じます。
〔一九二二年七月〕