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稚いが地味でよい
おさないがじみでよい
作品ID4034
副題「芽生える力」立岩敏夫作
「めばえるちから」たていわとしおさく
著者宮本 百合子
文字遣い新字新仮名
底本 「宮本百合子全集 第十七巻」 新日本出版社
1981(昭和56)年3月20日
初出「アカハタ」日本共産党中央機関紙、1948(昭和23)年6月9日号
入力者柴田卓治
校正者磐余彦
公開 / 更新2003-12-27 / 2014-09-18
長さの目安約 2 ページ(500字/頁で計算)

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本文より




 作者が添えた手紙でことわっている通り、まだ稚い作品ではあるけれどもリアリスティックな文学の筋の上に立っている。習作ではあるが『大衆クラブ』などにのせれば同感をもってよむひとは少くないだろうと思った。
 作者の心持が稚くても、ふっくりとしていて、描かれている農村の生活の細目も自然にうけとれた。ただし、主人公の青年の父親が、農民の生活を不安にする現実から、段々民主的な働きに目を向けて来てやがて積極的になってからのところが、割合安易にかけてしまった。アカハタをよみはじめ、黙って考えをかえてゆくあたりは、さもあろうと肯けるが、積極的になってから、あの父親は言葉まで急に若がえりすぎてしまってはいまいか。妹娘が兄のかくしておいたハタを紙型用にもち出して同級生に、とやかくいわれる場面はおもしろい。しかし、あとでアカハタが村へもっと入るようになってほかの娘も紙型用に学校へもって来るというところは、どうだろうか。何となし読んで、ひっかかった。アカハタがそれほど村に入れば、アカハタを大事にとっておくという心持も、それだけ村にひろがって行っているのが自然だろうのにと思った。稚いといっても小説は地味に大体このような組立てで書かれていってよいものだと思う。
〔一九四八年六月〕



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