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「伸子」創作メモ(二)
「のぶこ」そうさくメモ(に)
作品ID4199
著者宮本 百合子
文字遣い新字新仮名
底本 「宮本百合子全集 第十八巻」 新日本出版社
1981(昭和56)年5月30日
初出「宮本百合子全集 第十八巻」新日本出版社、1981(昭和56)年5月30日
入力者柴田卓治
校正者磐余彦
公開 / 更新2004-05-04 / 2014-09-18
長さの目安約 7 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 三月二十七日―四月十三日 自分台処で。きみは林町にやるスエ子の送り迎えのため
 博覧会 父の到着(父への話。今月は二つも三つも小説を書いたから大変都合がよい)
 滞在 泉岳寺、第二会場、万国街 青山墓地で倒れたこと。プリンス of Wells の歓迎門などを見る。
 Aと林町 自分
○ひとが居た方がよい心持
○友達のこと、
○教授のこと。
○肉感のことも。

 考え余りAと別々に暮すことをもち出す。A、田舎に引こんで 何も彼もすててしまうと云う。人を教えるものが妻と別れて平気で顔向けが出来るかという

 七月八日 坪内先生へ手紙
 足の工合がわるい
 一人での生活をしたい心、そのときのことを楽しく空想する

 七月二十二日 順天堂に通う。
 A大阪に立つ、自分翌日一人俥で来る 永い別れのような心持。いらっしゃいな。いや。わざわざ自分ゆく
「わざわざ来たの?」

 二十三日 林町の連中安積に立つ

○云うまい、云うまい、辛い、一思いにさしたい。云い出すと、要求ばかりになる辛さ

 七月二十五日 九時頃 坪内先生が来て下さる。
 奈良から鹿のハガキ
 カーターの魔術を見に(七月三十日)祖母をつれてゆかれる父

 八月六日 九十五度 西村さん、
 自分のヒステリー的傾向。

 十日にかえる。自分辛く、顔を見るのが苦痛。うまく笑えず H、A、
 西村、「二三度斯ういうことをくりかえして居るうちに、年をとってしまう人かな」涙をながす
 若し再び生きてかえれるなら、自分は忻んで死ぬ、死んで、この苦しい境遇をかえ、新しい芽のように、新生涯をふみ出すだろう。

 八月十三日 A、淋しいから林町からかえれ、という。

 八月十八日 那須に十一時の夜行で立つ。車中、五六人の東山行の団隊、丸い六十近いおどけ男、しきりに仲間にいたずらをする。紙切を結びつけたりして。

那須
登山 三日目
四五日目、Aの退屈、夏中出来なかった仕事のエキスキュースにされる。不快
六日目 ひどい雨、あのまっくらな雨
    うらの崖、熊ささ、しぶき、かけひの湯の音
七日目、Aかえる、自分もう少しなおしたい、そこへ部屋があいたと番頭来る。「ここだけの金を払ってるんだから動く必要はない、どうせあとに人が入るのだろう」
    見晴し台での話、
    「夏じゅう、すっかり、旅行で費してしまう。――自分のために来たのでもないのに」
    「自分のためでなくていやならすぐ、かえって頂戴!」
二十八日 黒磯でわかれ安積へ来る。
    のびやかな雰囲気へのあこがれ。四人 ヒデ男、スエ子などと大さわぎ。
    母、関の「呑気でいいことね」
    「本当に其那ことをする人なら見上げるよ。私の不明もわびよう」それではおそいという心持。

○七日 一つ夢を見る。Aが血が出るからと云って医者を呼び、傍に居る女中に気…

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