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一九二七年八月より
せんきゅうひゃくにじゅうしちねんはちがつより
作品ID4207
著者宮本 百合子
文字遣い新字新仮名
底本 「宮本百合子全集 第十八巻」 新日本出版社
1981(昭和56)年5月30日
初出「宮本百合子全集 第十八巻」新日本出版社、1981(昭和56)年5月30日
入力者柴田卓治
校正者磐余彦
公開 / 更新2004-05-09 / 2014-09-18
長さの目安約 9 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 一九二七年三月
 下旬の或日。春の始めの憂鬱な日がつづいた。
 A、四十五六。
   独身、一
 Y、三十二歳
 ※[#「Y+Y」、495-13] 二十九歳

     或夜

 A来る。十二月から一人で農園をして居た
 その朝
「友情うすき友達たちよ」
 云々
「女性の声がききたくなった」
 云々
 手紙が来た。その夜来る。三人ともナー[#挿絵]ァス 春の潮が神経をかき乱して居るため。
 何かの話から
 A、自分の妻、他の男が出来てその方に去ったこと、など話す
「女ってそうなもんなのかな、両方によくしておきたいんだな、然し僕は、それはその人にわるいからよせ」
と云った由にて交際はせず――そんな話珍しく出る。
 イカモノ
 女の何か書いたりする人っていうの大体イカモノ的な分子が多少ともあるんじゃないか

 女房――結婚しないだっていいと思うんだ、イカモノとイカモノでね
 A、そして Yの言葉とがめなどちょいちょいしてうるさし
 Y、赧くなりかんしゃくを起し
「いいじゃないか うるさい」怒る。
 何か※[#「Y+Y」、497-1]とAとの間に、一種恋愛的雰囲気みたいなものあって、AはそのためにYをじゃまにし YはそのためAをじゃまにす ※[#「Y+Y」、497-2]をめぐる感情。何かにつれて※[#「Y+Y」、497-2]Aと話して居ると、Yがひとり椅子によって居てこちらを見て居る意識になやまされ、ふと顔を見ると、Y、とても怒ったような苦しいような切迫した表情なので、はっとし、苦しく座に堪えず。立って出る。あとこっちできいて居ると、YとA話して居るのでやっと安心。
 ※[#「Y+Y」、497-6]にA好意をもって居るなり ※[#「Y+Y」、497-6]もそれを知ってわるい心地でない
 Aかえったあと、Y「あんな奴もう絶交してやろうか」などいう。
 ※[#「Y+Y」、497-8]変に居心地わるく苦しい心持になって それから数日陰鬱になる。
 何となし
 AとYとの感情の故にどうこうと云って、Aが惜しいのではないが……さて、……煙草の煙の最後の渦が消えたような心持とでもいうか。
〔欄外に〕
 Aの性格に対して、※[#「Y+Y」、497-13]好意は大して持たない ガンコなところ 自分の云いたいことしか云わないようなところ。
 こせつく口やかましいところなど

     四月

 恋、字の通りこい、あるものを追う、なきものを追うのが恋か という心地
 わがものにならぬものをものとせんとつとめるまでの ひかるる心 恋

     二つの愛

 ※[#「Y+Y」、498-2]
 対手はひとりでよし
 しかしその人が日々に新たな心の弾み、欲情、熱中をもって自分との生活をやってくれないとものたりなくなる心地
 わかれて居て淋しがるのもよいと思うようになる
 一人の対手に多く…

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