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無題(十)
むだい(じゅう)
作品ID4221
著者宮本 百合子
文字遣い新字新仮名
底本 「宮本百合子全集 第十八巻」 新日本出版社
1981(昭和56)年5月30日
初出「宮本百合子全集 第十八巻」新日本出版社、1981(昭和56)年5月30日
入力者柴田卓治
校正者磐余彦
公開 / 更新2004-05-13 / 2014-09-18
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)

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本文より




 三四日梅雨のように降りつづいた雨がひどい地震のあと晴れあがった。
 五時すぎて夕方が迫っているのに 雀がチク チ チチと楽しそうに囀り、まだ濡れて軟かく重い青葉は眼に沁みる程 蒼々として見える。どこでホーホケキョと鶯の声がする。遠くの欅の梢や松の梢のあたり 薄すり青っぽい靄がこめている。まだポトリ ポトリ 雨のしずくがトタン屋根にしたたっているが、前の瓦屋根越に見えるよその排気筒はしずかにゆるやかにまわって、蠅が 巻き上げた簾のところで かたまってとびまわっている。柿の花が目にとまった。見るととなりの庭の土の上に いくらかその花が落ちている、梅雨の頃の子供のときを思い出す。水たまり、柿の花が浮んでいる、ところ。



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