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しっかり者のすずの兵隊
しっかりもののすずのへいたい
作品ID42379
原題DEN STANDHAFTIGE TINSOLDAT
著者アンデルセン ハンス・クリスチャン
翻訳者楠山 正雄
文字遣い新字新仮名
底本 「新訳アンデルセン童話集第一巻」 同和春秋社
1955(昭和30)年7月20日
入力者大久保ゆう
校正者秋鹿
公開 / 更新2006-03-06 / 2014-09-18
長さの目安約 11 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

[#挿絵]
 あるとき、二十五人すずの兵隊がありました。二十五人そろってきょうだいでした。なぜならみんなおなじ一本の古いすずのさじからうまれたからです。みんな銃剣をかついで、まっすぐにまえをにらめていました。みんな赤と青の、それはすばらしい軍服を着ていました。ねかされていた箱のふたがあいて、この兵隊たちが、はじめてこの世の中できいたことばは、
「やあ、すずの兵隊だ。」ということでした。このことばをいったのはちいちゃな男の子で、いいながら、よろこんで手をたたいていました。ちょうどこの子のお誕生日だったので、お祝にすずの兵隊をいただいたのでございます。
 この子はさっそく兵隊をつくえの上にならべました。それはおたがい生きうつしににていましたが、なかで、ひとりが少しちがっていました。その兵隊は一本足でした。こしらえるときいちばんおしまいにまわったので、足一本だけすずがたりなくなっていました。でも、この兵隊は、ほかの二本足の兵隊同様、しっかりと、片足で立っていました。しかも、かわったお話がこの一本足の兵隊にあったのですよ。
 兵隊のならんだつくえの上には、ほかにもたくさんおもちゃがのっていました、でもそのなかで、いちばん目をひいたのはボール紙でこしらえたきれいなお城でした。そのちいさなお窓からは、なかの広間がのぞけました。お城のまえには、二、三本木が立っていて、みずうみのつもりのちいさな鏡をとりまいていました。ろうざいくのはくちょうが、上でおよいでいて、そこに影をうつしていました。それはどれもみんなかわゆくできていましたが、でもそのなかで、いちばんかわいらしかったのは、ひらかれているお城の戸口のまんなかに立っているちいさいむすめでした。むすめはやはりボール紙を切りぬいたものでしたが、それこそすずしそうなモスリンのスカートをつけて、ちいさな細い青リボンを肩にゆいつけているのが、ちょうど肩掛のようにみえました。リボンのまんなかには、その子の顔ぜんたいぐらいあるぴかぴかの金ぱくがついていました。このちいさなむすめは両腕をまえへのばしていました。それは踊ッ子だからです。それから片足をずいぶん高く上げているので、すずの兵隊には、その足のさきがまるでみえないくらいでした。それで、この子もやはり片足ないのだろうとおもっていました。
「あの子はちょうどおれのおかみさんにいいな。」と、兵隊はおもいました。「でも、身分がよすぎるかな。あのむすめはお城に住んでいるのに、おれはたったひとつの箱のなかに、しかも二十五人いっしよにほうりこまれているのだ。これではとてもせまくて、あの子に来てもらっても、いるところがありはしない。でも、どうかして近づきにだけはなりたいものだ。」
 そこで兵隊は、つくえの上にのっているかぎタバコ箱のうしろへ、ごろりとあおむけにひっくりかえりました。そうしてそこからみ…

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