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アラビヤンナイト
アラビヤンナイト
作品ID43122
副題01 一、アラジンとふしぎなランプ
01 いち、アラジンとふしぎなランプ
原題ALADDIN AND THE WONDERFUL LAMP
著者菊池 寛
文字遣い新字新仮名
底本 「アラビヤンナイト」 主婦之友社
1948(昭和23)年7月10日
入力者大久保ゆう
校正者京都大学点訳サークル
公開 / 更新2004-11-20 / 2014-09-18
長さの目安約 36 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 昔、しなの都に、ムスタフという貧乏な仕立屋が住んでいました。このムスタフには、おかみさんと、アラジンと呼ぶたった一人の息子とがありました。
 この仕立屋は大へん心がけのよい人で、一生けんめいに働きました。けれども、悲しいことには、息子が大のなまけ者で、年が年じゅう、町へ行って、なまけ者の子供たちと遊びくらしていました。何か仕事をおぼえなければならない年頃になっても、そんなことはまっぴらだと言ってはねつけますので、ほんとうにこの子のことをどうしたらいいのか、両親もとほうにくれているありさまでした。
 それでも、お父さんのムスタフは、せめて仕立屋にでもしようと思いました。それである日、アラジンを仕事場へつれて入って、仕立物を教えようとしましたが、アラジンは、ばかにして笑っているばかりでした。そして、お父さんのゆだんを見すまして、いち早くにげ出してしまいました。お父さんとお母さんは、すぐに追っかけて出たのですけれど、アラジンの走り方があんまり早いので、もうどこへ行ったのか、かいもく、姿は見えませんでした。
「ああ、わしには、このなまけ者をどうすることもできないのか。」
 ムスタフは、なげきました。そして、まもなく、子供のことを心配のあまり、病気になって、死んでしまいました。こうなると、アラジンのお母さんは、少しばかりあった仕立物に使う道具を売りはらって、それから後は、糸をつむいでくらしを立てていました。
 さて、ある日、アラジンが、いつものように、町のなまけ者と一しょに、めんこをして遊んでいました。ところがそこへ、いつのまにか背の高い、色の黒いおじいさんがやって来て、じっとアラジンを見つめていました。やがて、めんこが一しょうぶ終った時、そのおじいさんがアラジンに「おいで、おいで」をしました。そして、
「お前の名は何と言うのかね。」と、たずねました。この人は大へんしんせつそうなふうをしていましたが、ほんとうは、アフリカのまほう使でした。
「私の名はアラジンです。」
 アラジンは、いったい、このおじいさんはだれだろうと思いながら、こう答えました。
「それから、お前のお父さんの名は。」また、まほう使が聞きました。
「お父さんの名はムスタフと言って、仕立屋でした。でも、とっくの昔に死にましたよ。」
と、アラジンは答えました。すると、この悪者のまほう使は、
「ああ、それは私の弟だ。お前は、まあ、私の甥だったんだね。私は、しばらく外国へ行っていた、お前の伯父さんなんだよ。」
と言って、いきなりアラジンをだきしめました。そして、
「早く家へ帰って、お母さんに、私が会いに行きますから、と言っておくれ。それから、ほんの少しですが、と言って、これをあげておくれ。」と言って、アラジンの手に、金貨を五枚にぎらせました。
 アラジンは、大いそぎで家へ帰って、お母さんに、この伯父さんだとい…

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