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アラビヤンナイト
アラビヤンナイト |
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作品ID | 43123 |
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副題 | 03 三、アリ・ババと四十人のどろぼう 03 さん、アリ・ババとよんじゅうにんのどろぼう |
原題 | ALI BABA AND THE FORTY THIEVES |
著者 | 菊池 寛 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「アラビヤンナイト」 主婦之友社 1948(昭和23)年7月10日 |
入力者 | 大久保ゆう |
校正者 | 京都大学点訳サークル |
公開 / 更新 | 2004-11-21 / 2014-09-18 |
長さの目安 | 約 19 ページ(500字/頁で計算) |
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昔、ペルシャのある町に、二人の兄弟が住んでいました。兄さんの名をカシムと言い、弟の名をアリ・ババと言いました。お父さんがなくなる時、兄弟二人に、財産を半分ずつに分けてくれましたので、二人は、同じような財産を持っておりました。
さて、カシムはお金持のおじょうさんをおよめさんにもらいました。それからアリ・ババは貧乏な娘をおかみさんにもらいました。お金持のおじょうさんをもらったカシムは、毎日ぶらぶら遊んでくらしていましたが、そのはんたいに、アリ・ババは毎日せっせと働かなくてはなりませんでした。毎朝早くから三びきのろばを引いて森へ出かけて、木を切っては、それを町へ持って帰って売って、そのお金で、やっとその日その日をくらしてゆくというありさまでした。
ある日のこと、アリ・ババが、いつものように森へ行って木を切っていますと、はるか向うの方に、まっ黒い砂けむりが、もうもうと立っているのが見えました。その砂けむりは、見るまにこちらへ近づいて来ましたが、見れば、それはたくさんの人が馬に乗って、いそいでかけて来るのでした。
「きっと、どろぼうにちがいない。」アリ・ババはふるえながら、三びきのろばをかくして、自分はそばの木にのぼりました。そして、こわごわ様子を見ていました。
アリ・ババののぼった木の下まで来ると、どろぼうたちは、みんな馬からとびおりました。くらにつけてあった袋もおろしました。
そして、そのどろぼうたちのかしららしい男が、木のそばにある岩の上にのぼって行きました。そしていきなり、
「開け、ごま。」
と、大きな声でさけびました。すると、どうでしょう。その岩が、ぱっと二つにわれました。中には重そうな戸が閉まっているのが見えました。やがて、その戸は見る見るうちにすうーっと開いてゆきました。そして、どろぼうたちが、その戸の中へどかどかと入って行くと、音もなく戸が閉まってしまいました。
やがてまもなく、どろぼうたちは出て来ました。さっきのかしらが、また、
「閉まれ、ごま。」
と、さけびました。戸はすうーっと閉まってしまいました。そして岩も、もとの岩になってしまいました。どろぼうたちはどこかへ去ってしまいました。
アリ・ババは木からおりました。そして、さっきどろぼうのかしらが言った、ふしぎな言葉をおぼえていたものですから、岩の上へのぼって、
「開け、ごま。」と、どなってみました。
そうすると、やっぱり岩がわれて、さっきの戸が開きました。アリ・ババは中へ入って行きました。その中は大きなほら穴でした。りっぱな宝物や、金貨や銀貨をつめこんだ大きな袋が、すみからすみまで、ぎっしりとつみ重ねてありました。これだけのものをあつめるには、まあ何年かかったことだろうと、アリ・ババは思いました。そしておそるおそる、金貨をつめこんだ袋ばかりを六つ取り出しました。そして手早く三びきの…