えあ草紙・青空図書館 - 作品カード
楽天Kobo表紙検索
瓜子姫子
うりこひめこ |
|
作品ID | 43459 |
---|---|
著者 | 楠山 正雄 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「日本の諸国物語」 講談社学術文庫、講談社 1983(昭和58)年4月10日 |
入力者 | 鈴木厚司 |
校正者 | 土屋隆 |
公開 / 更新 | 2006-11-14 / 2014-09-18 |
長さの目安 | 約 6 ページ(500字/頁で計算) |
広告
広告
一
むかし、むかし、おじいさんとおばあさんがありました。ある日おじいさんは山へしば刈りに行きました。おばあさんは川へ洗濯に行きました。おばあさんが川でぼちゃぼちゃ洗濯をしていますと、向こうから大きな瓜が一つ、ぽっかり、ぽっかり、流れて来ました。おばあさんはそれを見て、
「おやおや、まあ。めずらしい大きな瓜だこと、さぞおいしいでしょう。うちへ持って帰って、おじいさんと二人で食べましょう。」
といいいい、つえの先で瓜をかき寄せて、拾い上げて、うちへ持って帰りました。
夕方になると、おじいさんはいつものとおり、しばをしょって山から帰って来ました。おばあさんはにこにこしながら出迎えて、
「おやおや、おじいさん、お帰りかえ。きょうはおじいさんのお好きな、いいものを川で拾って来ましたから、おじいさんと二人で食べましょうと思って、さっきから待っていたのですよ。」
といって、拾って来た瓜を出して見せました。
「ほう、ほう、これはめずらしい大きな瓜だ。さぞおいしいだろう。早く食べたいなあ。」
と、おじいさんはいいました。
そこでおばあさんは、台所から庖丁を持って来て、瓜を二つに割ろうとしますと、瓜はひとりでに中からぽんと割れて、かわいらしい女の子がとび出しました。
「おやおや、まあ」
といったまま、おじいさんもおばあさんも、びっくりして腰を抜かしてしまいました。しばらくしておじいさんが、
「これはきっと、わたしたちに子供の無いのをかわいそうに思って、神さまがさずけて下さったものにちがいない。だいじに育ててやりましょう。」
「そうですとも。ごらんなさい。まあ、かわいらしい顔をして、にこにこ笑っていますよ。」
と、おばあさんはいいました。
そこでおじいさんとおばあさんは、あわててお湯をわかして、赤ちゃんにお湯をつかわせて、温い着物の中にくるんで、かわいがって育てました。瓜の中から生まれてきた子だからというので、瓜子姫子という名前をつけました。
瓜子姫子は、いつまでもかわいらしい小さな女の子でした。でも機を織ることが大すきで、かわいらしい機をおじいさんにこしらえてもらって、毎日、毎日、とんからりこ、とんからりこ、ぎいぎいばったん、ぎいばったん、機を織っていました。おじいさんはいつものとおり、山へしば刈りに出かけます。おばあさんは川へ洗濯に出かけます。瓜子姫子はあとに一人、おとなしくお留守番をして、あいかわらず、とんからりこ、とんからりこ、ぎいぎいばったん、機を織っていました。
おじいさんとおばあさんは、いつも出がけに瓜子姫子に向かって、
「この山の上には、あまんじゃくというわるものが住んでいる。留守にお前をとりに来るかも知れないから、けっして戸をあけてはいけないよ。」
といって、しっかり戸をしめて出て行きました。
二
するとある日…