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![]() やまへのぼったまり |
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作品ID | 43531 |
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著者 | 原 民喜 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「原民喜戦後全小説下」 講談社文芸文庫、講談社 1995(平成7)年8月10日 |
入力者 | Juki |
校正者 | 土屋隆 |
公開 / 更新 | 2007-11-15 / 2014-09-21 |
長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
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史朗は今度一年生になりました。まだ学校へ行く道が憶えられないので、女中が連れて行きます。女中は史朗の妹を背に負って行くのでした。妹は美しい毬を持っています。その毬は姉が東京から土産に買って来たものでした。毬には桃の花の咲いた山の絵が描いてあります。
さて、ある日、先生が「今日はこれから山へのぼりましょう」と申しました。皆はそれでワイ/\と喜びながら、学校の門を出ました。山は学校のすぐ側にあったので、すぐ登れました。草原にちらかって遊びました。桃の花が咲いていました。史朗も妹も、みんなその辺で遊びました。暫くして山を下りました。史朗は女中に連れられて家へ戻りました。
戻って気がつくと、妹の毬が無くなっているのでした。どうしたのだろう、どこへやったのかしらと大探ししてもありません。毬は、山へ連れて行かれたので急に元気になって勝手にはね廻って、ころ/\、転んで、そのまゝ、「この山は僕の絵と似てるな」と云って、ねころんでしまったのでしょうか。