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演劇新潮と築地小劇場
えんげきしんちょうとつきじしょうげきじょう |
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作品ID | 44332 |
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著者 | 岸田 国士 Ⓦ |
文字遣い | 新字旧仮名 |
底本 |
「岸田國士全集19」 岩波書店 1989(平成元)年12月8日 |
初出 | 「文芸時代 第一巻第三号」1924(大正13)年12月1日 |
入力者 | tatsuki |
校正者 | Juki |
公開 / 更新 | 2009-04-04 / 2014-09-21 |
長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
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僕は、此の一年間、色々な事情で、あまり芝居を観にも行かず、月々発表される脚本も割合に読んでゐないから、劇壇全般に亘る感想といふやうなものは勿論書けない。
殊に旧劇や新派劇に対しては、能やオペラに対すると同様、殆ど批判的な眼を向けたことはない。もう少し生活に落ちつきができたら、自分らの国で、自分らの仕事が、今どういふ位置と関係にあるかといふことなども、広く見極めたいと思つてゐる。
処で、差し当り、今年に至つてから、僕の志してゐる仕事と、直接間接に、最も交渉の多かつたのは、雑誌演劇新潮と築地小劇場とである。色々な意味で、雑誌演劇新潮と築地小劇場とは大正十三年度の劇壇を刺激し、新劇復興の機運を助長したと思ふ。
私事に亘るやうであるが、僕は、自作発表の機会を演劇新潮に於て与へられたことを、山本有三氏の好意と倶に感謝してゐる。
それと、同時に、築地小劇場が、表面、僕とその芸術的立場を異にしながら、なほ且つ、ひとり、僕の期待を徐々に満たしつゝあることを密かに悦ぶものである。