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心平かなり
こころたいらかなり
作品ID44371
著者岸田 国士
文字遣い新字旧仮名
底本 「岸田國士全集20」 岩波書店
1990(平成2)年3月8日
初出「文芸時代 第三巻第四号」1926(大正15)年4月1日
入力者tatsuki
校正者小林繁雄、門田裕志
公開 / 更新2005-10-23 / 2014-09-18
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)

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本文より




 不平があるなら云へといふことだが、不平を不平の形にして表はすのは如何にも芸のない話だと思ふから、近頃愉快なことだけを挙げて置かう。実を云ふと、さうする方が手取早くていゝ。
 第一に、此の頃肥つたのが目立つこと。
 第二に、少しぐらゐ歩いても疲れが出ないこと。
 第三に、よく眠れること。
 かういふことは、なるほど、読者の興味をそゝるに十分ではない。それなら――

 近頃、演劇雑誌の創刊されるもの、迎接に暇なき有様であることがその一つ。
 近頃、或る批評家が、ルノルマンの「落伍者の群」を評して、恰もオオドヴウルの如しと云ふ、その意味がわからずにゐると、傍から「ヴオオドヴイル」のことならずやと云はれ、さうか知らと思つてゐると、なんのことはない、洋食の「オオルドウウヴル」のことであつたのがその二つ。
 近頃、枯れたと思つてゐた梅が、何時になくあでやかな花をつけたことがその三つ。
 まあ、これくらゐにして置く。



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