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女性風俗時評
じょせいふうぞくじひょう |
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作品ID | 44440 |
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著者 | 岸田 国士 Ⓦ |
文字遣い | 新字旧仮名 |
底本 |
「岸田國士全集23」 岩波書店 1990(平成2)年12月7日 |
初出 | 「東京日日新聞」1936(昭和11)年8月18日 |
入力者 | tatsuki |
校正者 | 門田裕志 |
公開 / 更新 | 2009-11-22 / 2014-09-21 |
長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
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女の間に「キミ」「ボク」といふ言葉が流行してゐる。女同士の会話には非常にはやつてゐるのだが、さすがにまだ男と女との会話には余り出て来ない。もつとも男とそんな風な会話をするやうな女性だつたら、なか/\もつて油断のできない強か者であらう。
かうした口をきく女の子は、奇妙にアリストクラテイツクな学校の生徒に多い。例へば家庭では「遊ばせ」言葉を使つてゐるやうな女学生が、友達同士になると反動的に「キミ」「ボク」といふ調子で話をするやうである。
つく/″\考へるのだが、所謂モダン・ガールといふものは、随分向うみずな我儘なものだと思ふ。今更こんなことをいふのはをかしいけれども、話などしてゐると我武者羅で圧倒されるが、彼女達は自分の弱点を少しも反省してゐない。ガンと一つやられゝば参つてしまふのに、少しもそれに気がついてゐないらしい。そんな点は却つて封建時代の女の方がしつかりしてゐたらう。現代はその反動期なのかも知れない。