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焼き林檎を投げる
ポンム・キユイットをなげる |
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作品ID | 44557 |
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著者 | 岸田 国士 Ⓦ |
文字遣い | 新字旧仮名 |
底本 |
「岸田國士全集21」 岩波書店 1990(平成2)年7月9日 |
初出 | 「悲劇喜劇 創刊号」1928(昭和3)年10月1日 |
入力者 | tatsuki |
校正者 | 門田裕志 |
公開 / 更新 | 2007-11-24 / 2016-05-12 |
長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
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見物のやじり方には、古今東西を通じていろいろあるやうだが、昔、仏蘭西では、舞台の俳優めがけて、腐つた卵や、焼き林檎を投げつけるといふ野蛮な風習があつた。
この風習は、後にやや緩和されて、口笛(シツフレ)となり、それでも、このシツフレはなかなか盛んで、「大根ひつこめ」ぐらゐの愛嬌では納まらない場合がある。
そこへ行くと、日本の見物は実に寛大で、役者は誠に気楽だが、そのために舞台がだらけきつてゐる。乱暴を奨励するわけではないが、日本にも役者がヘマをやつたら、梅干か蒟蒻ぐらゐぶつける習慣があつたら面白いだらう。(一九二八・一〇)