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作品ID | 44638 |
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著者 | 岸田 国士 Ⓦ |
文字遣い | 新字旧仮名 |
底本 |
「岸田國士全集24」 岩波書店 1991(平成3)年3月8日 |
初出 | 「東京朝日新聞」1940(昭和15)年1月7日 |
入力者 | tatsuki |
校正者 | 門田裕志 |
公開 / 更新 | 2010-02-08 / 2014-09-21 |
長さの目安 | 約 2 ページ(500字/頁で計算) |
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劇壇をざつと見渡してみて、そこに若い時代の溌剌たる動きがちつとも見えないのは特に演劇といふものゝ性格によるのであらうか? さういふこともたしかにあると思ふが、しかし、それよりもなによりも、私は、最近の新劇がやゝ老成の態を擬して新風を阻む傾向が著るしいからだと思ふ。
さういふ現状のなかから、期待すべき人々を挙げるとなると、勢ひ挙げても挙げなくてもおなじことで、私にもなにか張合がない。まだ表面に現れぬ力がどこかで養はれてゐはせぬかと、絶えず注意はしてゐるつもりだが強ひて期待をもつとすれば、さういふところで、徐々に大きく坐り直さうとしてゐる一群の新進作家たちにであらう。
ところが、この「坐り直す」といふことが、単に時局と調子を合せるといふことでないだけに、実はたいへんなことで、今までの勉強の役に立つ部分よりも、邪魔になる部分の方が多いといふ場合もなくはないのである。私の若い仲間のなかでも、現に今年からスタートを切り直さうとして、「健康な材料」と取り組んでゐる二三の連中もゐる。
紀元二千六百年奉祝演劇といふ与へられた課題は、正にその努力を試みる絶好のチヤンスなのである。阪中正夫、内村直也、矢取甲六の三君が文学座のためにそれぞれ大作を書きあげたことを先づ告げよう。