えあ草紙・青空図書館 - 作品カード

作品カード検索("探偵小説"、"魯山人 雑煮"…)

楽天Kobo表紙検索

芥川賞(第十八回)選評
あくたがわしょう(だいじゅうはっかい)せんぴょう
作品ID44715
著者岸田 国士
文字遣い新字旧仮名
底本 「岸田國士全集26」 岩波書店
1991(平成3)年10月8日
初出「文芸春秋 第二十二巻第三号」1944(昭和19)年3月1日
入力者tatsuki
校正者門田裕志
公開 / 更新2010-06-09 / 2016-04-14
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)

広告

えあ草紙で読む
▲ PC/スマホ/タブレット対応の無料縦書きリーダーです ▲

find 朗読を検索

本の感想を書き込もう web本棚サービスブクログ作品レビュー

find Kindle 楽天Kobo Playブックス

青空文庫の図書カードを開く

find えあ草紙・青空図書館に戻る

広告

本文より


「棉花記」、「和紙」、「伝染病院」、「淡墨」、「道」の五篇のうちから、私は「和紙」を推すことにした。
 健康な美しさとでも云ふべきものがあり、「和紙」といふ標題の象徴が、作品の感触のなかに見事に生かされてゐる点を小説として最も高く評価したいからである。
「棉花記」は、正面から時局的問題を取扱つた野心作で、十分読みごたへはあつたが、未完結のため、全体としての点数はまだ入れられない。
「淡墨」も時局的意義をもつた好個の短篇でなかなか鋭いところのある才筆には感服したが、劇的な事件を記録風に書き流した技巧に却つて見得を切つたやうなところがあり、感動が少し浮いてゐると思つた。
「伝染病院」はかういふ材料を自己中心の生活記録にしたところがどうも新鮮でなく、黙し難いであらう一種の公憤が愚痴つぽく響くのをなんとかしてほしいと思はせるやうな小説である。
「道」はちかごろ注目すべき作品には違ひないけれども、率直に云つて、私は、今、かういふものはそつとしておきたいのである。



えあ草紙で読む
find えあ草紙・青空図書館に戻る

© 2024 Sato Kazuhiko