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『敗戦の倫理』編者のことば
『はいせんのりんり』へんじゃのことば
作品ID44726
著者岸田 国士
文字遣い新字旧仮名
底本 「岸田國士全集27」 岩波書店
1991(平成3)年12月9日
初出「敗戦の倫理」静話会出版部、1946(昭和21)年5月1日
入力者tatsuki
校正者門田裕志
公開 / 更新2008-08-15 / 2014-09-21
長さの目安約 2 ページ(500字/頁で計算)

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本文より




 こゝに集めたいくつかの文章は、最近の諸雑誌を通じて私の眼にふれたもののなかから、これは是非青年諸君に熟読してもらひたいと思つた評論感想の類を選んで再録したものである。
 執筆者はいづれもそれぞれの方面で一家を成し、かつ、いろいろの意味で、私の日ごろ信頼をおいてゐる人々であつて、これらの文章はもちろん、温かい、まじめな態度で敗戦日本のすがたを直視し、高い識見によつて祖国の向ふべき方向を指し示したものである。
 特に解説のやうなものが必要ではないかと思はれるところもあり、読者によつては多少わかりにくい理論がゝつた文章もあるにはある。しかし、考へながら読むことが思想を深めることになり、苦心をしてやつとわかることは、読書の楽しみの一つである。それを思へば、これくらゐの文章を読みこなす力は、日本人みんながもつてゐて然るべきである。
 時によつて、これらの文章が、青年諸君の間で話題になることも望ましい。または、読書会のやうな催しに、これらがテキストとして用ひられることもあつていいやうに思ふ。
 われわれ日本人は、なにはともあれ、思想の貧しさによつて、この戦ひを戦ひ、そしてこの戦ひに敗れたのだと言つても誤りではない。思想の貧しさはいつたいどこから来たのか。いふまでもなく、一般に『物を考へることのきらひな性質』から来たのである。
 若しこの状態がこのまゝ続いたら、日本は完全に滅びると、私は言ひきる。
 青年諸君は、この書に集められた文章によつて、世にも惨めな祖国の現状をはつきりつかみ、そこから新しい希望と勇気とを湧きあがらせてほしい。



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