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辻久一著「夜の芸術」
つじひさいちちょ「よるのげいじゅつ」 |
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作品ID | 44758 |
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著者 | 岸田 国士 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「岸田國士全集27」 岩波書店 1991(平成3)年12月9日 |
初出 | 「日本読書新聞」1949(昭和24)年6月8日 |
入力者 | tatsuki |
校正者 | 門田裕志 |
公開 / 更新 | 2010-07-25 / 2014-09-21 |
長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
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演劇は黄昏に、映画は未明にある、という意味で、この書の題はわが意を得ている。前者においてともしびをかかげ、後者に於て鎧戸を開く役目を、この著者に期待しても間違いはあるまい。
著者は本書の中で演劇の近代性を裏づける伝統の精神を、映画にあつては、その機械性を支える人間の知能と感覚とを、適確に、執拗に追求めている。現在日本の実情が彼をそこに赴かしめたのである。従つて、その考察の多くは、濃原子時代色と同時に、ある種の偏見に対する不器用な抗議を含み、それは動もすれば性急でしかも迂遠な姿勢とみえることもある。だが、これこそ、最も気まぐれな二つの芸術――演劇と映画――を真に愛するものの宿命的な表情である。
本書において、著者は、その言わんとするところを言いはじめたに過ぎぬ。しばらく耳を傾けて、いささか多弁ながら的を外さぬ主張を、最後まで聴く必要があろう。