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「現代演劇論・増補版」あとがき
「げんだいえんげきろん・ぞうほばん」あとがき
作品ID44887
著者岸田 国士
文字遣い新字旧仮名
底本 「岸田國士全集28」 岩波書店
1992(平成4)年6月17日
初出「現代演劇論・増補版」白水社、1950(昭和25)年11月25日
入力者門田裕志
校正者noriko saito
公開 / 更新2011-04-06 / 2014-09-16
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


 ふたゝび私のために開かれた演劇の門は、やはり私にとつてなつかしいふるさとである。
 そこでは、かつて私の友であり、仲間であつた多くの作家、俳優、演出家、舞台監督、舞台美術家などが、それぞれ困難な時代の試練に堪へて、注目すべき業績をすでに残してゐる。そして、また、そこからは、新しい才能の芽が、僅かではあるが、健やかに伸び育つてゐるやうに思はれる。
 この当然の事実が、私に希望と勇気とを与へたとはいへ、一方、演劇全般にわたる疲弊、演劇の進歩をはゞむ障碍は、依然としてとり除かれてゐない。「いはゆる新劇」の前途にさへ、このまゝでは決して光明はないといふことを知つたのである。
 私は、かつて繰りかへし主張したことを、更に、今後も、繰りかへして主張する必要のあることを痛感する。幸ひにして、私の発言は、やうやく無用の雑音によつて妨げられることなく、初心の人々の耳に伝へられる時が来た。
 さう信じることだけが、旧稿に若干の新稿を加へて、私の「現代演劇論」を編んだ理由である。
  千九百五十年十一月
著者



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