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ラヂオ文学の収穫――「なだれ」
ラジオぶんがくのしゅうかく――「なだれ」
作品ID44899
著者岸田 国士
文字遣い新字旧仮名
底本 「岸田國士全集28」 岩波書店
1992(平成4)年6月17日
初出「東京日日新聞」1938(昭和13)年4月27日
入力者門田裕志
校正者noriko saito
公開 / 更新2011-04-02 / 2014-09-16
長さの目安約 2 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


 真船豊氏のラヂオ・ドラマ集を一読して感じたことは、いはゆる「ラヂオ・ドラマ」の形式としての目立つた新工夫がない代り、飽くまでも戯曲の定石を踏んで、しかもラヂオ的な効果をねらつた独得の計算が行はれてゐるといふことである。
 元来、戯曲家としての氏の才能は、現実的な物の捉へ方にあるのである。興味の対象となつた人間の生活の一場面は、正確な日常的の観察と稀に見る執拗な粘着力によつて極めて躍如たる風景として描き出されるのが常である。この才能に加ふるに氏はあらゆる舞台的手法を寛大に率直に駆使して作品に十分のアクセントを与へ、かつあらゆる題材は一種北国的な相貌によつてかの吹雪と馬橇の鈴の音とを想ひ浮べさせる。万人の心を惹く所以である。
 本集収むるところのラヂオ・ドラマ四篇、それ/″\放送に際しては好評を博したものださうであるが、今読んでみてなるほどそれは当然のことと思はれる。
 ラヂオ・ドラマは将来どういふ発達を遂げるか、この点に関してはいろ/\議論もあらうが、真船氏の作品は文学の延長としてこの新しい表現部門を見事に征服したといへるであらう。その意味においてたしかに「なだれ」一巻は当節、ラヂオ文学の一つの教科書ともなり得るものであることを私はこゝに吹聴して憚らない。



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