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トントンピーピ
トントンピーピ |
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作品ID | 44936 |
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著者 | 村山 籌子 Ⓦ |
文字遣い | 新字旧仮名 |
底本 |
「日本児童文学大系 第二六巻」 ほるぷ出版 1978(昭和53)年11月30日 |
初出 | 「子供之友」婦人之友社、1925(大正14)年9月 |
入力者 | 菅野朋子 |
校正者 | noriko saito |
公開 / 更新 | 2011-03-04 / 2014-09-21 |
長さの目安 | 約 5 ページ(500字/頁で計算) |
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もうぐらもちはころころころ、おてゝはみぢかし、しつぽはないし、ころころころげてにげたれど、トントンピーピのわるとびに、とうとうおくつをさらはれた。
こすゞめすゞめは チユウ チユウ チユウ
「チユウ チユウ チユウ チユウ チユウ チユウ チユウ。かあさんすゞめきておくれ。かあさんすゞめきておくれ。わたしのだいじなからかさを、トントンピーピのわるとびが、わるとびが、とうとうさらつてとんでつた。」
こすゞめすゞめはあめにぬれ、ぬれぬれなけど、ないたけど、かあさんすゞめはやぶのなか。やぶのなか。
あをい葉ばかりのぐみの木は、あをい葉ばかり、日はてれど、あをい葉ばかりぐみの木は。
「あかいぐみの実をみせとくれ。みせとくれ。」
まつくろくろ蟻がきいたらば
「トントンピーピのわるとびが、これはきれいだ、きれいだと、ほめほめちぎつて、またほめて、ほめほめちぎつてとんでつた。」あをい葉ばかりのぐみの木は、あをい葉ばかりのぐみの木は。
おひげなくした白ひつじ、あつちへむいちや
「ごめんなさい。」
こつちへむいちや
「ごめんなさい。トントンピーピのわるとびに、おひげとられてごめんなさい。」ともだちひつじにわらはれて、かほはあかあか白ひつじ。
「おひげなくしてごめんなさい。」
「ピーピーピーピー今日は。としよりおうちの、こなやさん。」
「おや おや これはトンピーさん。なにかごやう。トンピーさん。」
トントンピーピのわるとびは、ぬすんだおくつをひからせて、あかいぐみのみをはねにつけ、白いおひげをはりつけて、はりつけて、からかささしてやつてきた。あめもふらぬにかささして。
「ほんとにごりつぱなトンピーさん。トントンピーピのとんびさん。」
トントンピーピのわるとびは、としよりお家にほめられて、ほめられて、つんつんつんとそりかへり、
「としより家さんみておくれ。ひかつたおくつをみておくれ、あかいかざりをみておくれ。まつしろおひげをみておくれ。からからからかさみておくれ。」
としよりお家はおどろいた。おどろいた。
ぐみの実、しろひげ、ひかつたくつ、からかさからかさ、大じけん。きのふのしんぶんの大じけん。もうぐらもちはないてるし、こすゞめすゞめはしかられた。かあさんすずめにしかられた。からかさとられてしかられた。かわいさうなぐうみの木。はじかきひつじ、白ひつじ。トントンピーピのわるとんび。きのふのしんぶんの大じけん。
おくつとられたもうぐらもち、なくなくつちへもぐりこみ、もぐりこみ、一丁目、二丁目、三丁目、四丁目の角へくびだした。四丁目の角はこなやさん。としよりお家のこなやさん。おくつとられたもぐらもち、四丁目の角へくびだした。
「やあ、やあ、これはぼくのくつ。ぼくのくつ。」トントンピーピのわるとびの、はいてるおくつをそつととり、五丁目、六丁目、七丁目、あと…