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|  あひるさん の かみのけ あひるさん の かみのけ | |
| 作品ID | 44959 | 
|---|---|
| 著者 | 村山 籌子 Ⓦ | 
| 文字遣い | 新字旧仮名 | 
| 底本 | 「日本児童文学大系 第二六巻」 ほるぷ出版 1978(昭和53)年11月30日 | 
| 初出 | 「子供之友」婦人之友社、1928(昭和3)年4月 | 
| 入力者 | 菅野朋子 | 
| 校正者 | noriko saito | 
| 公開 / 更新 | 2011-05-02 / 2014-09-16 | 
| 長さの目安 | 約 2 ページ(500字/頁で計算) | 
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 あるところに、大へんおとなしい一羽のあひるさんがありました。ちひさくてまだ手が頭にとゞきません。毎朝髪をゆつてもらはねばなりませんでした。
 あひるさんには、おぢいさんだけしかないので、おぢいさんに髪をゆつてもらふのでしたが、おぢいさんは男で、おまけに大へんなとしよりでしたから、あひるさんの髪をあまりハイカラにはゆつてやれないのでした。
 毎朝、あひるさんは鏡のまへで、横をむいたり前をむいたりして髪の形をながめましたが、いつでも油で髪がかたまつて、頭のてつぺんの所できつく結はへてあるので、目をしばたたくこともできないくらゐ引きつつてゐるのでした。
 ある日、あひるのおばさんが、たづねてきて、大笑ひに笑ひだしました。
「なんてまあ、変てこな髪だこと。」しかし、その時、あひるのおぢいさんが、ぷくんとおこつたやうな顔をしたので、
「私が、うまくゆつてあげませう。」と言ひかけましたが、そのまゝ、それをのどのおくへひつこめてしまひました。かわいさうなあひるさん。
 あひるさんは、それからといふもの、ごはんもろくに食べられないくらゐに、悲しみました。
 あひるさんのおぢいさんは、一生けんめい考へて、こてをかつてきて、髪をちゞらせてやりました。
 これで、やつと、あひるさんは、ハイカラになりました。それで、ごはんは前の二倍くらゐたべるやうになりました。ずいぶん運のいいあひるさん。