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おもちや の めがね
おもちゃ の めがね
作品ID44963
著者村山 籌子
文字遣い新字旧仮名
底本 「日本児童文学大系 第二六巻」 ほるぷ出版
1978(昭和53)年11月30日
初出「子供之友」婦人之友社、1928(昭和3)年10月
入力者菅野朋子
校正者noriko saito
公開 / 更新2011-05-09 / 2014-09-16
長さの目安約 2 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


 あるところにおばあさんがありました。だいぶ目がうすくなつたので、目鏡が一つほしいと思つて、ためておいたお金をお財布に入れて目鏡やさんに行きました。おばあさんは、
「目鏡やさん、このお財布のなかのお金をすつかりあげますから、一番よく見える目鏡を下さい。」と申しました。目鏡やさんはお財布をしらべましたら、五厘銅貨が廿枚しかありませんので、がつかりしてしまひましたが、十銭でも、もうけなければ損だと思つて、
「おばあさん。これは丁度十銭です。」と言つておもちやの目鏡をあげました。おばあさんは大喜びでお家へそれを持つて帰りました。
 夕方夕刊が来ましたので、おばあさんは目鏡をかけてみました。けれども、文字など何一つ見えません。あんまり目を皿のやうに、ひろげたのでおばあさんはつかれて、眠つてしまひました。そしてそれつきり目鏡のことなどは忘れてしまひました。
 それから一月位たつと、又、おばあさんは、目がうすくなつた事に気がついて、ためておいたお金を持つて目鏡やさんに行きましたが、矢張り、五厘銅貨が廿枚しかないので、目鏡やさんは、前と同じおもちやの目鏡をおばあさんにあげました。おばあさんは、それをかけましたが、一向文字などは見えませんので、つい目鏡のことなどは忘れてしまひました。こんなことを毎月毎月くりかえしましたので、たう/\おばあさんのお家はおもちやの目鏡で一杯になつてしまひました。そしておばあさんは、夜も外で寝なければならない位になりました。おばあさんは悲しくて泣いてゐました。
 おもちやの目鏡さんたちは、おばあさんの泣いてゐるのを見て、気の毒に思ひましたので身体を曲げたり、手をちゞめたりして、小さくならうとしましたが、この上、どうにもならないのでした。
 おばあさんはこれを見て、おもちやの目鏡さんたちが、かわいさうで堪らなくなりました。そして、たう/\決心して、街のおもちややさんに五円五十銭で買ひ取つてもらふことにしました。
 おばあさんは、この五円五十銭を持つて又目鏡やさんに行きました。目鏡やさんはお金を勘定して、今度は、ほんとによく見える目鏡をくれました。おばあさんは、もう此の上目鏡を買ふこともなくなつたので、広いお部屋で、呑気に、新聞がよめることになりました。



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