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ゾウ ト ネズミ
ゾウ ト ネズミ |
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作品ID | 44969 |
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著者 | 村山 籌子 Ⓦ |
文字遣い | 新字旧仮名 |
底本 |
「日本児童文学大系 第二六巻」 ほるぷ出版 1978(昭和53)年11月30日 |
初出 | 「子供之友」婦人之友社、1930(昭和5)年6月 |
入力者 | 菅野朋子 |
校正者 | noriko saito |
公開 / 更新 | 2011-06-14 / 2014-09-16 |
長さの目安 | 約 3 ページ(500字/頁で計算) |
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あるところに、ぞうさんとねずみさんがゐました。ぞうさんはわがまゝで、おこりんぼで、ねずみさんは、おくびやうで、こわがりやでした。そのふたりが、とてもなかのよくなつたおはなしです。もと、ふたりは、かういふふうに、せいしつが、たいへんちがつてゐたので、がつかうで、おなじつくゑでべんきやうをしてゐましたが、どうしても、なかよくすることができませんでした。
なぜといつて、ぞうさんは、おひるのごはんのときには、いつでも、わらだの、かすぱんなどをもつてきて、ねずみさんが、にくだの、おこめなどをたべてゐるのをみると、すぐ、おとなりから、はなでつつくのです。「ねずみくん、おいしさうだなあ、すこしぼくにもわけてくれないか。」といひますので、ねずみさんはこわいので、だまつて、ちひさくなります。ぞうさんは、えんりよなく、ねずみさんのおべんたうをたべてしまひました。ねずみさんは、それでもおこりません。ただこわくてこわくてしかたがありませんでした。
ところが、あるひのこと、ねずみさんは、がいこくからかへつたおぢさんから、ぼうえんきやうをいたゞきました。それをもつて、がくかうにまゐりました。すると、ぞうさんが、やつてきて、「それなんだい、ぼくにちよつとかしてくれたまへ。」といひましたが、らんぼうもののぞうさんにかしては、こわされてしまひさうなので、「ぞうさん、これ、なんでもないんだよ。こんなふうにしてのぞいてゐるだけだよ。」といひました。ぞうさんは、しつぽをぴりぴりとふるはせて、おこりはじめました。ねずみさんは、ぼうえんきやうに、めをあててみせました。すると、ねずみさんは、きゆうにわらひだしました。ぞうさんは、ますますおこりました。ぞうさんがおこるほど、ねずみさんは、おほわらひしました。ぼうえんきやうからみえたぞうさんは、まめつぶほどちひさくて、一ちやうもむかふのほうにゐるやうでした。ぞうさんはおこつて、ぼうえんきやうをねずみさんからひつたくつて、めにあてました、「やあ、なんて、りつぱなねずみくんだらう。」とぞうさんはびつくりしました。
ぞうさんは、ねずみさんとは、ぎやくに、めがねをめにあてましたので、ねずみさんは、やまのやうにおほきく、りつぱにみえました。「や、どうも、ありがたう。」と、めがねをはづして、ねずみさんに、わたさうとしましたら、ねずみさんは、それはそれは、ちひさくみえましたが、なんだか、とても、りかうにみえましたので、どうしても、「これ、ぼくのえんぴつととりかへつこしようや。」とはいひませんでした。
ねずみさんは、だんだん、ぞうさんがこわくなくなりましたので、ぞうさんに、さんじゆつや、よみかたのわからないのををしへてあげたりしました。そして、すつかり、なかよしになりました。