えあ草紙・青空図書館 - 作品カード
楽天Kobo表紙検索
ひつじさんと あひるさん
ひつじさんと あひるさん |
|
作品ID | 44971 |
---|---|
著者 | 村山 籌子 Ⓦ |
文字遣い | 新字旧仮名 |
底本 |
「日本児童文学大系 第二六巻」 ほるぷ出版 1978(昭和53)年11月30日 |
初出 | 「幼年倶楽部」講談社、1930(昭和5)年9月 |
入力者 | 菅野朋子 |
校正者 | noriko saito |
公開 / 更新 | 2011-06-14 / 2014-09-16 |
長さの目安 | 約 3 ページ(500字/頁で計算) |
広告
広告
あひるさんのうちの きんじよに、ひつじのやうふくやさんがありました。あひるさんは、がくかうからかへると、まいにち、ひつじさんのおみせへいって、ひつじさんが、ミシンでやうふくをぬふのを、みてゐました。
ひつじさんは、あひるさんが、まいにちきてうるさいので、おしまひには、あひるさんが、はなしかけても、へんじをしなくなりました。
「をぢさん、このきれ、なんていふの。」ときいても、
「をぢさん、ぬひめがまがってるよ。」といっても、ひつじさんは、だまってミシンをかけてゐました。
あひるさんは、はらがたってたまりません。みちばたから、こいしをひろってきて、ミシンの上にそっとおきました。
ひつじさんは、あひるさんの方もみないで、そのこいしを、ぽんと、そとへすてました。
あひるさんはすぐ、木のはを、ひろってきて、ぬってゐるやうふくのうへへ、ばらまきました。ひつじさんはだまって、やうふくブラッシで、はらひおとしました。
あひるさんは、こんどは、木のきれをもってきて、ひつじさんのおひげや、せなかや、あしをつつきはじめました。
すると、みるみるうちに、ひつじさんのかほのいろがかはって、
「いたづらあひるめ、もうゆるさないぞ。」
といふと、ぬひかけのやうふくをはふりだして、あひるさんをおっかけてきました。
あひるさんは、どんにげました。そしてやっと、おうちへ、かけこみました。
「おかあさん、ぼく、いま、へんなひつじさんにおっかけられたの。そこで、つかまりさうになったの。」とあひるさんは、いきをきらしていひました。
「さうかい、よくきをつけないと、わるいやつがゐるから。」とおかあさんは、あたまをなでてくださいましたが、あひるさんのむねは、いつまでもどき/\してゐて、
「これおやつだからおあがり。」と、くださったおくわしも、のどにとほりませんでした。
やうふくやのひつじさんは、やっぱり、まいにち、ミシンをかけてゐましたが、もう、あひるさんはこなくなりました。しかし「やれ、やれ、せい/\した。」とおもったのは二三にちのあひだで、なんだかやっぱり、あひるさんがこないと、さびしくなってきました。
あひるさんは、がくかうのゆきかへりに、ひつじさんのおうちのまへをとほりますが、ちひさくなって、わきをむいて、こそ/\とほりますので、よびとめることもできません。
「あひるさんや、あひるさんや。」と、おほきなこゑでよびますと、あひるさんは、カバンをかかへて、どん/\にげていってしまひました。
ひつじさんは、がっかりしましたが、そのうちにとてもきれいなやうふくを一まいぬって、あひるさんのうちへとどけて、またあそびにくるやうに、おかあさんにたのみました。そして、
「そんなに、ミシンがすきなら、おでしにして、あげよう。」といひました。
それから、あひるさんは、ひつじさんのおでしになっ…