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怪談会の怪異
かいだんかいのかいい |
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作品ID | 45526 |
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著者 | 田中 貢太郎 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「伝奇ノ匣6 田中貢太郎日本怪談事典」 学研M文庫、学習研究社 2003(平成15)年10月22日 |
入力者 | Hiroshi_O |
校正者 | noriko saito |
公開 / 更新 | 2010-11-09 / 2014-09-21 |
長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
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震災の前であった。白画堂の三階で怪談会をやったことがあった。出席者は泉鏡花、喜多村緑郎、鈴木鼓村、市川猿之助、松崎天民などで、蓮の葉に白い強飯を乗せて出し、灯明は電灯を消して盆燈籠を点け、一方に高座を設けて、譚をする者は皆その高座にあがった。
数人の怪異譚がすむと、背広服を着た肥った男があがった。それは万朝報の記者であった。
「この話は、私の家の秘密で、公開を禁ぜられておりますが、もう時代もすぎましたから、話してもいいと思いますから話しますが、これは田中河内守を殺した話でありますが、それを殺した者は、私の祖父……」
と云いかけて詞がもつれだした。一座の者はおやと思って記者の顔へ眼をやる間もなく、その記者は前のめりになって高座の下へ落ちたので、怪談会はしらけてしまって、未明までやるはずのものが、一人帰り二人帰りして、十二時頃には何人もいなくなった。そして、その記者は脳溢血のような病気で、三日ばかりして歿くなった。これは市川猿之助の実話をそのまま。