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![]() にげていくひとだま |
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作品ID | 45558 |
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著者 | 田中 貢太郎 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「伝奇ノ匣6 田中貢太郎日本怪談事典」 学研M文庫、学習研究社 2003(平成15)年10月22日 |
入力者 | Hiroshi_O |
校正者 | noriko saito |
公開 / 更新 | 2010-11-19 / 2014-09-21 |
長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
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二人の仕事師が某夜夜廻りに往っていると、すぐ眼の前でふうわりと青い火が燃えた。二人は驚いて手にしていた鳶口で、それを敲こうとすると、火の玉は吃驚したように向うの方へ往った。
二人は鳶口を揮りながら追っかけた。そして、数町往ったところで、その火の玉は唯ある巷へ折れて、その突きあたりの家の櫺子窓からふわふわと入ってしまった。と、家の中から苦しそうな呻きが聞えて来た。それと同時に年とった女の声がした。
「お爺さん、これお爺さん、何をそんなに魘されてるのだよ」
すると老人の声で、
「ああ怕かった、乃公が街を歩いてると、何をかんちがいしやがったのか、二人の仕事師が、だしぬけに鳶口を持って追っかけて来たのだから、命からがら逃げて来たのだよ」
と云った。