えあ草紙・青空図書館 - 作品カード

作品カード検索("探偵小説"、"魯山人 雑煮"…)

楽天Kobo表紙検索

レンズに現われた女の姿
レンズにあらわれたおんなのすがた
作品ID45566
著者田中 貢太郎
文字遣い新字新仮名
底本 「伝奇ノ匣6 田中貢太郎日本怪談事典」 学研M文庫、学習研究社
2003(平成15)年10月22日
入力者Hiroshi_O
校正者noriko saito
公開 / 更新2010-11-23 / 2014-09-21
長さの目安約 2 ページ(500字/頁で計算)

広告

えあ草紙で読む
▲ PC/スマホ/タブレット対応の無料縦書きリーダーです ▲

find 朗読を検索

本の感想を書き込もう web本棚サービスブクログ作品レビュー

find Kindle 楽天Kobo Playブックス

青空文庫の図書カードを開く

find えあ草紙・青空図書館に戻る

広告

本文より


 保土ヶ谷の某寺の僧侶が写真を撮る必要があって、横浜へ往って写真屋へ入り、レンズの前へ立っていると、写真師は機械に故障が出来たからと云って撮影を中止した。
 僧侶はしかたなしに次の写真屋へ往って、レンズの前へ立ってたところで、どうした事かその写真師も、レンズに故障が出来たと云って中止した。僧侶はよく故障が出来るものだが、どうした事だと独言を云いながら、又次の写真屋へ往った。そして、又レンズの前へ立ったところで、又機械に故障が出来たと云って謝絶られた。僧侶は業をにやして、
「何故そんなに、機械に故障が起るのだ」
 と云って詰問すると、写真師は、
「あなたは、こうしてみると一人だが、黒い布を被ってみると、後へ女の顔が出て来る」
 と云った。そこで交渉の結果、警官を呼んで来て、警官の手で撮影してもらい、出来あがったところを見ると、僧侶の頭の上へ髪を振り乱した女が坐っていた。警察では奇怪至極とあって内務省へ報告した。その報告書は内務省に現存して、浅野正恭翁も一読したと云って、筆者は浅野翁からそれを聞かされた。そして、写真に現われた女は、その僧侶の先妻であったが、その先妻が病気で歿くなる時、後妻をもらってくれるなと遺言したが、僧侶がそれを守らなかったので、その怪異が起ったものであった。



えあ草紙で読む
find えあ草紙・青空図書館に戻る

© 2024 Sato Kazuhiko