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戦後合格者
せんごごうかくしゃ |
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作品ID | 45898 |
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著者 | 坂口 安吾 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「坂口安吾全集 11」 筑摩書房 1998(平成10)年12月20日 |
初出 | 「新潮 第四八巻第三号」1951(昭和26)年2月1日 |
入力者 | tatsuki |
校正者 | noriko saito |
公開 / 更新 | 2009-03-23 / 2014-09-21 |
長さの目安 | 約 14 ページ(500字/頁で計算) |
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敗戦後の日本に現れたニューフェースの筆頭は公認された日本共産党であったろう。しかし、これぐらい内容拙劣なニューフェースは他に例がなかった。完全なる無内容、それに加うるにいたずらなる喧嘩ずき、まるで人間の文化以前の欠点だけを集成して見せつけられているようであった。
彼らのやった仕事の総量は、事毎に牙をむいて吠えたがる野犬の行跡に酷似しているが、人間のなすべき事には全く似たところがない。「なすべき」というのは、知識と責任を背景にしたところの、という意で、政党と政党員には当然必要とすべき条件をさすのである。
彼らのやった仕事の主なるものはと云えば、ナホトカからスクラムをくんで祖国へ敵前上陸の筋金入りの人達をたきつけて益々ダダをこねさせたり、坐りこませたりすることである。尤もこれに対しては、かくの如くに教育して敵前上陸せしめた海の彼方の本店を咎めることが先でなければならないが、本店の押しつける無法な仕打を修正して受け入れるだけの識見がない無能な三太夫ぶりというものは、どこの国の共産党にくらべてもこれ以下のものは見当らない。この三太夫は本店の殿様の手打になるのをビクビクしているだけである。
彼らが行った政策の唯一のことは、他に対する不協力ということである。反対のための反対。漸進的なるものに対する拒否。同じことでも自分が主導してやるのでなければイヤだという全体主義であるが、それも単に否定し反対するだけの破壊的な方策によって全体主義の性格を誇示したにすぎないのである。
占領軍の指図による農地解放などは、古今東西の歴史に照しても大革命の一種である。これを利用したならば、農村の新秩序をたて、生活を改善し、共同的な作業法や、相互扶助の方法を与え、農村に文明の恩沢や文化生活を導入することもできたろうと思う。そんなことは何一つやってやしない。やる能力がないのだ。事に当って利用し善用すべき研究も素養も持ち合せていなかったのだ。彼らは空想的な革命家、もしくは英雄好みの冒険愛好家であるにすぎなくて、祖国の農村の歴史や現実に就て着実な考察や設計などは所有していなかった。そして彼らが同じころ政策のスローガンにかかげたことはと云えば、隠退蔵物資のテキハツだの遊休大邸宅の解放などと、スパイの中でも三下奴がやるようなことしかやれなかったのである。
現在も尚追放文士の一人である武者小路実篤は何十年前にともかく新しい村という空想的ではあっても彼の精一杯の設計を現実にやったが、共産党ときては、大きな図体をして、その理想のモデルたる部落も工場も設計して真価を世に問うてみるだけの内容も実力もなかった。前進座という党員を座員に組織された相当に有能な劇団も、その敬服すべき努力も忍耐も組織も座員の個人的なもので、党による文化運動の見るべきものなどは一つもない。ただ文化指導者同士の血で血を洗う内紛をさら…