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小説集「山吹の花」後記
しょうせつしゅう「やまぶきのはな」こうき |
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作品ID | 45951 |
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著者 | 豊島 与志雄 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「豊島与志雄著作集 第六巻(随筆・評論・他)」 未来社 1967(昭和42)年11月10日第1刷 |
初出 | 「山吹の花(限定版)」筑摩書房、1954(昭和29)年1月 |
入力者 | 門田裕志 |
校正者 | Juki |
公開 / 更新 | 2013-07-03 / 2014-09-16 |
長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
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短篇集を一冊まとめるについて、作品をあれこれ物色してるうちに、つい、近作ばかり集める結果となってしまった。時間的に距離の近いものほど、感情のつながりが濃いからであろうか。その代り、作品の出来栄えについては、却って自分には見えにくい。
校正刷を一覧したところ、淡々と書き進めた作品もあるけれど、それよりも、勝手気儘に書きちらした作品の方が多い。言いたいことを端的に表現してしまいたかったのだ。もう少し、構想をねり、造形に努力した方が、よかったのかも知れない。だが、小説という形式に対し、何かしら怒りっぽく、心平らかでないものが、どこかにあったらしい。つまり、私小説的なエッセンスとでも言えるものを、随所にばらまく結果ともなった。
昔から私の作品は、だいたい習作的なものが多かったが、これらの作品もその例にもれない。将来はどうなることやら。
最近私は病を得て、当分静養、執筆を避けている。そのため、いろいろ考えることも多い。或るいは本書が、私の創作傾向の一転機となるかも知れないし、ならないかも知れない。もう少し考えてからのことだ。